建築家安藤忠雄

著者 :
  • 新潮社 (2008年10月25日発売)
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◆どんなことが書かれているか(ジャンルなど)

ジャンルは自伝(2008年頃までの内容)です。
※建築に明るくなくても読めますが、知らない人名や用語が出てくる可能性はあります。

プロボクサーから建築家を志し、逆境のなか道を切り開いていった過程が書かれています。
それもそのはずで、大学で専門的な教育を受けず、学閥など後ろ盾のないマイナスからのスタートでした。

今でこそ「世界のANDO」と言われていますが、著者自身が「影にいながらも希望の光を求めて歩き続けた」「連戦連敗」と語っているように、思いどおりにいかず相当に苦労したことが伺えます。
そんな状況下でも自分の信念を貫きとおす意志の強さがいかに大切か、彼の思想や行動から嫌というほど分かる一冊です。

◆出会ってどんな変化や影響があったか

彼の人生から感じたのは挑戦と闘争であり、私も起業してから大切にしているマインドです。

挑戦的な建築は前例のない要素が多く、設計段階でクライアントや役所と意見が衝突します。
それでも決して相手に迎合せず、思想や意義を根気強く伝えて同意を取りつけます。
彼の設計は、狭小住宅なのに全体の3分の1を占める中庭により雨の日は傘を差した移動が前提だったり、浅い川といえど護岸を削って水面ぎりぎりに建築したり、屋外に鎮座する大仏をコンクリートで囲って遠くから見えなくしたり、設計した建築物に接する車道を危険という理由で歩行者空間化したり、クライアントの御用聞きと役所の言いなりに徹していては絶対に実現できないものばかりです。

「仕事は与えられるものでなくつくるもの」「厳しい現実に直面してもあきらめず闘うこと」、その覚悟と行動の先にこれまでにない何かが掴めると信じて生きていこうと思えました。

ちなみに、この著書が出たあとに安藤さんは癌が2度見つかり、5つの臓器を摘出するという大変な闘病を経験しましたが、その後も挑戦を止めることなく活躍し続けています。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: セレンディピティ(良い出会い)な本_2024030
感想投稿日 : 2024年3月7日
読了日 : -
本棚登録日 : 2024年3月6日

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