この映画はブクログでよく絡んで下さる方が本棚に登録してたので知りました。それプラス、自分がブクログを始めたきっかけがジョージ・オーウェルの本だったのでスペイン内戦に興味を持ちまして。あとジョー・ストラマー、天本英世・・・それら色んな流れが集約された結果。ずっと観たかったんですがレンタル店にないのでこれまた無理矢理観ました。
普通に、表面上だとこの映画は★3~4ぐらい。今の映像感覚で観ると特に「美しい」わけでもないし、映像表現として優れているわけでもない(・・・と書くと語弊がありますが、「昔の映画だから」という意味で。必要充分以上に美しいです)。
主人公の女の子、アナちゃんは確かにかわいい。この作品の下敷きになってる、ボリス・カーロフ版『フランケンシュタイン』を観て、お姉ちゃんとお家に帰るときの「フランケンシュタイ~ン!」というセリフはかわいらしすぎて爆笑。
そういうとこはとっても良いし、ロリペド野郎の人にはまた別に需要があるかもですがw・・・モヤ~っとする映画なんですよこれ・・・背筋が寒くなる、怖い映画です。他の方の感想、「モヤモヤした」「意味不明だった」「難解」というのはほんとに正解なんです。モヤモヤする映画、わけがわかんない映画を観て・・・あれなんだったんだろうなあ?と考え続けるのが大事で、あとで気付くことも多いと思うんです。
スペイン内戦もの、いくつか観たり読んだりした他の作品のレビューにリンクを張っておきます。
・『パンズ・ラビリンス』
http://booklog.jp/users/gmint/archives/1/B0012EGL4M
・『ブラック・ブレッド』
http://booklog.jp/users/gmint/archives/1/B0090CKO1E
・『カタロニア讃歌』
http://booklog.jp/users/gmint/archives/1/4480087273
あとケン・ローチ監督の『大地と自由』という映画があって、これは『カタロニア讃歌』をベースにしてるようで、のちの『麦の穂をゆらす風』にも続いてる作品だと思うんですが、現在DVDがほぼ絶版に近い状況のようです。
『ミツバチのささやき』の話に戻ると、この映画はなぜすごいのか?というと、映像で語ってるからです。セリフがかなり少なくて、全部象徴で語ってる。これに近い映画はポランスキーの『水の中のナイフ』とかがそうでした。
フランコ政権は1939~75年まで36年間も独裁を敷いてて、それが終わる2年前の1973年の映画。だから『水の中のナイフ』同様、「言いたいことが言えない」のを、映画の中ですべて象徴として語るしかなかった。
細かいところで、自分が気づいたりざっと調べた点。
・お母さんの書く手紙は誰に出してるかはわかりませんがフランス宛だそう。『ブラック・ブレッド』でもありますが左翼活動をしてる人たちがフランスに逃げてるので、昔の彼氏か誰かがそうなってるということ。
・お母さんの弾くピアノは『ソロンゴ・ヒターノ』という曲らしく、この歌詞がストーリーに関係する。
・『禁じられた遊び』にも近い話だけど、アナは死は理解できてるよう。ただ「殺される理由」はよくわからない。『フランケンシュタイン』の映画だと、殺される理由は倫理的な面。『ミツバチのささやき』本編だと政治・思想的な面。子どもだからわからなくて当然だけど。
・窓がハニカムになってるところはわかり易いですよね。
・アルバムの写真でお父さんと写ってる人・・・お父さんは転向して、今は体制側に従順。
・アナがお姉ちゃん不信になって、「お姉ちゃん死ねばいいのに・・・」と火あぶりになる。魔女狩り。
・なんで魔女かというと、ペットが黒猫。「魔女」「女」で、たぶんここはアナの純真無垢との対比。
・と、考えたら宮崎作品だと『魔女の宅急便』にもつながる気がします。
・「黒」はアナキズム、アナキストの象徴だと思う。この映画で黒いものは2つ出てきます。ひとつめは毒キノコ、ふたつめは黒猫。それぞれどうされるかというと・・・・・・
『となりのトトロ』もそうですが、『パンズ・ラビリンス』『ブラック・ブレッド』はこの作品以降の流れ。言えなかったことをもっと直接的に描いたのが『パンズ・ラビリンス』と『ブラック・ブレッド』だと思います。なのでこのふたつを観ると、『ミツバチのささやき』のテーマがかなりはっきりと見えてきます。間に『ダンサー・イン・ザ・ダーク』が入ってる気がしてならないけど。
- 感想投稿日 : 2014年4月17日
- 本棚登録日 : 2014年4月14日
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