『ソラニン』、2010年春公開。これも観に行こうとしてたけど、地元の映画館で公開してなかったか何かの理由で行けなかった。11年越しに鑑賞、クソ映画かなと思っていたけど意外と良かったです。
その前に今回言っておきたいのは、「浅野いにおはサブカルではない」あるいは「最後のサブカルだった」ということ。長くなりそうなので後で書く。
三木孝浩さんの初監督作品。この映画はとにかく映像が良い。撮影監督は近藤龍人さん!まぁーほんとにすごい方で、今の日本映画界の撮影監督でトップクラスの重要人物だと思います。
私はあまり詳しくないけど『ソラニン』はたぶんフィルム撮影(現像してるから)。この映画の良さの半分は映像。
映画全体的には前半のテンポが悪く、もう15分ぐらい短くして良かったと思う。この映画のもうひとつの良さは、クライマックスの宮崎あおい。
逆に悪いのは、漫画のセリフや演出をそのままトレスしているのでダサい所が数か所ある点。初監督ということもあって演出力不足だなと思います。
観ていて頭にポンと浮かんだワードが『ロックよ、静かに流れよ』だった。観たことないのに。調べるとかなり近い話で、諏訪太朗さんはどちらにも出ている笑。あと『タッチ』。
そしてこの作品は、ゼロ年代中盤版の『アイデン&ティティ』や『お茶の間』だとも思う。
主要人物のキャストも良い。特にサンボの近ちゃんは良い味出してます。しかし伊藤歩は「それNGちゃうん?」というセリフが1箇所ある。あとこれは原作からだけど、種田&芽衣子や近ちゃん&伊藤歩のくだりは男の妄想が強い。あんな女性はまずいません!笑
高良健吾くんは好きなのだけど、なんかちょっと違うんだよなあ……背が高すぎてイケメンすぎて笑顔が素敵すぎるからか?
そして宮崎あおいちゃんは……私ごときがどうこう言えません。けして「好き」までは行かないんだけど、だいたい何見てもかわいいよね……。
原作はもうずっと読み返していないので、細かい部分は忘れている。原作だと前半は種田(高良健吾)の一人称目線じゃなかったっけ?テレビのニュースを見て凹むのってこれじゃなかったかなと思うんだけど。
映画版を観て、『ソラニン』は決別の歌で、劇中で3つの意味に解釈されると思う。ひとつは最初に芽衣子(宮崎あおい)が思った「ふたりの別れの歌」、もうひとつは「夢への決別の歌」。そして最後は……これは映画のラストを見ればわかる。そうやって歌に込められた意思が解釈され、バトンタッチされていく。
なので種田は、ひとつ上のステージに上る、成長しかけています。(因みに井浦新は違う形ですでにこの答えに到達した人。)
浅野いにお、私は最初の『素晴らしい世界』の頃に知った。その後はだいたい持っていて、プンプンの途中でめんどくさくなって追いかけるのをやめちゃった。『ソラニン』は最初に読むには読みやすい作品だと思う。まあプンプン以前はだいたい短かいけど。
ふたつの意味でイタくて、ひとつは作品のヒリヒリしたイタさでとても良い意味。もうひとつは、浅野いにお作品の立ち位置がイタいということで、このせいで買わなくなったし、「いにおはなぁ〜……」とアンビバレンスな気分になってしまう。
最初に書いた「浅野いにおはサブカルではない」ということ、これは本人や作品のせいではなくて、いにおが登場した頃にはすでにサブカルチャーというもの自体がなくなった、あるいは意味が変質してしまったせい。(もちろんマンガ作品なので広義ではサブカルチャーだけど)
宮沢章夫説だと、「1999年の六本木WAVE閉店(と2000年のオリーブ休刊)」だそう。私の考えだと1997年頃にヴィレヴァンが全国展開したことから、2000年代中盤以降アイドルブームになったことや動画サイトが出来たこと。1997年は最初のエヴァ完結編と、『もののけ姫』が公開された年でもある。
1997年から2005年頃の間に、サブカルチャーがサブではなくメインになったと考えています。
その最後の頃に登場したのが浅野いにお。だから劇中ではまだアイドルブームになっておらず、「アイドルのバックバンドなんて……」という価値観だし、まだガラケーの時代。
もはや今、ロックバンドという形態の意味も変質してしまった。所謂ロキノン系バンドがまだ力を持っていた、最後の頃です。『ソラニン』という曲に今新しい解釈を与えるなら、ロックバンドに対する決別の歌でもある。
いにおは私の少し年下なのでほぼ同世代。聴いてきた音楽や、お笑いなど触れてきた文化はほとんど同じ。だからわかりみが強すぎてイタい……やってきたことほとんど一緒。『ソラニン』を読んだり観たりすると、ギャーッ!っつって壁に頭をガンガン打ち付けたくなる。
「種田なんでウダウダしてんの?」問題も、平成不況を過ごした世代ならわかると思う。就職すれば、そこから抜け出せなくなってしまうと感じるからです。
これが10歳上や、あるいは10歳下世代だとわからない部分もあるかもしれない。『ソラニン』は「あの時、あの年齢」でしかわからない、「点」のような作品。そしてそういう「点」のような作品は、今後もそれぞれの世代において作られていくと思います。
「いにおはサブカルぢゃないよ」説に戻って、もうひとつは「最大公約数」だと思うからです。つまりポップで誰にも受け入れられやすいということ。
アジカンが絡んでいるのがわかりやすくて、どちらも最大公約数的です。だから私はアジカンが好きではないのだけど。
EDのゴッチの歌より、はっきり言ってあおいちゃんの歌の方が良いな……。しかしコロナ禍のせいもあって昨年はまーったく音楽を聴かない一年だったけど、これ見て「そうだ、音楽聴こう。」と思わされました。
- 感想投稿日 : 2021年3月14日
- 読了日 : 2021年3月10日
- 本棚登録日 : 2021年3月10日
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