いずれの短編も話が綺麗すぎるので読み応えはなくて、「平均点のおいしさ」に「かけがえのない人の死」というスパイスがふりかけられる「王道」の味付け。しかしこれは決してけなしているわけではなく、誰もが「かけがえのない人の死」を日常で経験することは数少ないし、またもちろん経験したくないから普段は考えないようにしているからこそ、「その日」の前、その日、後を淡々と丁寧に描くことに意味があるし、消費するのではなく何度も噛み砕く必要があるのだろう。端々に感情のひだのような言葉が散りばめられていて丁寧に読みたい短編集である。しかし逆説的に、第二人称の死の後の、一人称の生の絶望への不安というものもかき立てられたことも書き記しておきたい。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
小説
- 感想投稿日 : 2014年4月4日
- 読了日 : 2014年4月4日
- 本棚登録日 : 2014年2月20日
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