「きよしこ」
吃音の少年が青年から大人の入口まで成長していく様子を描いた作品
物語は淡々と日常を等身大のままに、飾らずストレートに描写している。
タイトルにもなっている「きよしこ」
でも作中、きよしこは殆ど現れない…
それはきよしこがいなくても、少しずつ自分で考えて、自分の気持ちと向き合って、人とどう関わるかを模索出来るようになったから…
「抱きついたり手をつないだりしてれば、伝えることはできるんだ。それが、君のほんとうに伝えたいことだったら…伝わるよ、きっと」
「ひとりぼっちのひとなんて、世の中に誰もいない。抱きつきたい相手や手をつなぎたい相手はどこかに必ずいるし、抱きしめてくれるひとや手をつなぎ返してくれるひとも、この世界のどこかに、絶対にいるんだ」
きよしこの言葉を胸に少年が少しずつ大人になっていく。
吃音と度重なる転校を経験した分、人の傷みにも敏感に気付けるし、不器用でも真っ直ぐに伝えたいことを伝えられる。
ピュアで傷付きやすいのに思いやりがあって、少しずつ成長して生きて行く様が、なんだか切なくて嬉しくて…
飾り気もなくて、派手さもない。
でもただただ、温かい血の通った作品で感動した。
やっぱり重松清さんの作品は深い。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2023年6月20日
- 読了日 : 2023年6月20日
- 本棚登録日 : 2023年6月17日
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