町長選挙 (文春文庫 お 38-3)

著者 :
  • 文藝春秋 (2009年3月10日発売)
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大人気の伊良部シリーズ第3弾!『町長選挙』

収録は以下の4話
「オーナー」
「アンポンマン」
「カリスマ稼業」
「町長選挙」

今回もまた伊良部医師の天真爛漫(いや、この表現はやや買い被り過ぎかも)で破天荒な様子を存分に楽しめた。
なかでも特に良かったのが「オーナー」と「アンポンマン」の2作品

このシリーズを読んでいると、日常の些細なことがどうでも良くなってくるような、妙な感覚に陥いる。流されると言うのも、時に必要なのかもしれない。本当か?笑

本作での伊良部の開口第一声となる「いやだよーん」とか、きっと大人では彼にしか言えない台詞だと思う。
この台詞、大人になっても言ってみたい状況は、たくさんある。でも言わずに我慢して毎日必死に生きてるからこそ、代弁してくれる彼に夢中になるのかもしれない。

今回は謎めいた看護師のマユミちゃんにもスポットライトがあたっていたが、想像を超えて来ないので、個人的にはミステリアスなままの方が良かった。

それにしても回を追う毎に、だんだんと神経科の診療から離れている様な気がするのは私だけだろうか。
最初の頃に、どうにか見出そうとしていた伊良部の言動の意図する所とか、彼なりの診療方針とか、きっともう見付からない予感がしている。笑

ただ、唯一確かなのは、伊良部の前だとみんな素直になって心を開いてしまうということ。
そして何度も伊良部の元へ足が向いて、気付いたら注射を打たれてしまう。まぁ、注射はオマケだが(おいおい、オマケって)患者が心を開放できる医師って、それだけでかなり貴重で、ある種の才能なのかもしれない。

終盤に分かった伊良部の弱点!
なんだ、お母さんだったのか。
って、マザコンかよ!の結末だった。
これは次回作とか、母登場なのかもしれない。

非常識すぎる物語の中で、気楽に身を委ねて楽しむのにはもってこいの一冊だった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2024年4月29日
読了日 : 2024年4月29日
本棚登録日 : 2024年4月6日

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