1930年代のジュネーヴ。ギリシャ生まれのユダヤ人で若くして国連事務次長を務める美貌のソラル。大貴族ドーブル家の血筋を引く完璧な美女にして、出世と見栄しか頭にない小心者の外交官ドゥーヴの妻アリアーヌ。社交界のドンファンたるソラルはアリアーヌを見染めて危険な恋を仕掛ける。「賭けをしませんか。もし3時間以内に貴女が恋に落ちなかったら貴女のご主人を部長に任命しましょう」こんなセリフ、ぜってー言えねえー!ソラルは女を堕とす11の法則を独り言のように語り出す。語り終えたときにはもうアリアーヌはソラルのもの。ホロコーストが忍び寄る暗澹たるヨーロッパで繰り広げる反時代的な恋愛劇…二人は愛の真実を知り肉欲へとハマっていく。いやらしい。欲求の描写が細かくてエロい。
この現代フランス文学の傑作は、プルースト的瑣末主義とセリーヌばりの溢れ出す独白表現、サンドラール的露骨な自然主義を併せ持つ異常な恋愛大河小説なのだ。人間の虚栄心や嫉妬、高揚感など思考を辿って非現実なほどに無駄なセリフを全て語らせる。そしてアリアーヌが恋に堕ちると彼女の恋心、不安、浮かれた気分などの全ての感情が語られる。ここの描写は見事なもので主人公にシンクロして怒濤の恋愛をし疲れ果ててしまうのだ。
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- 感想投稿日 : 2020年11月15日
- 読了日 : 2020年11月15日
- 本棚登録日 : 2020年11月15日
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