この小説について、いつか、誰かと深く語り合った。でも、なかなか思い出せない。ただ一つ言えるのは、この本の主軸であるこのヒロインの女の子は、ファンタジーだということだ。このヒロインは、上海ベイビーやノルウェイの森に出てくる女ほどビッチでも感傷的でもなんでもない。ただの「男の理想」である。女の子にとっても、「こんな風に男を振り回せたら」という意味で、女の理想かもしれない。がまずは「女神」のようなものである。聖母のようなものである。その聖母が大学を卒業し、夢から覚めて、だんだんと世俗化してくる。その「女神の死」を書いたものであり、「こういう理想の女から、だんだんと男は女に幻滅しながら、卒業していく」というブルースのような作品である。ぶっ飛んでいるヒロインかもしれないが、正直、大学の先輩たちの体育会系のノリの仕業のほうがよほどひどいしぶっ飛んでいる。最初、バスでヒロインが話しかけてくるのだが、その始まり方だって、まるでジブリかなにかのようで、本当にファンタジーだ。
そして、この女は結局どうなるか? おそらく、結構幸せに、何事もなかったかのようにちゃっかり生きている訳である。いつまでも引きずっているのは男のほうであると思う。
しつこい描写というか、いろんなものやら身内ネタは、デッドプールのようで、ついていけない。ありがたがっても仕方ない。じゃあ、こっちは初音ミクの話題をがんがん小説の中で書けばいいだけだ。
女神と出会い、女神と別れる。物語の流れは実にスタンダードで、女神と出会いファンタジーのような大学生活を過ごし、そして現実に戻る。まるで王の帰還である。だからこそ、普通に楽しめるし、面白いのである。
- 感想投稿日 : 2018年1月20日
- 読了日 : 2018年1月20日
- 本棚登録日 : 2018年1月20日
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