昆虫: 驚異の微小脳 (中公新書 1860)

著者 :
  • 中央公論新社 (2006年8月25日発売)
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感想 : 27
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バイオロジーのバックグラウンドがないと全てを理解するのは難しいが、説明にも手抜きがない力作。長年、真摯に昆虫研究に打ち込んでこられた様子が垣間見えて好感が持てる。C.Elegansのように、全ての遺伝子、ニューロンの配置が解明された生物もあるが、昆虫は1ミリ立方の脳に100万個程度のニューロンとそこそこ複雑だ。霊長類のような大型の動物との違いはもちろん多く、色覚など紫外線、青、緑に感受性があり(赤はない)、短波長側にずれている。体が小さいため視力も0.01とか0.02程度で空間分解能に劣る。その代わり明暗の検出や時間分解能は優れており、ハエには蛍光灯のちらつきも見えているそうだ。神経回路は単純で、バッタの羽のニューロンは2-3個しかない。面白かったのは、相違点よりも類似点の話。これには記憶におけるCREBの役割など、古くから保存されてきたものもあるが、動きの検出回路などのように、単眼と複眼では全く違うハードウェアにも関わらず大型動物と同じ原理のものがあり、これが異なる進化の過程を経て同じものにいたる収斂進化の好例となっている。カニッツァの三角形など、錯視も起こるそうだ。また、ゴキブリのニューロンに電極を刺す苦労や、ハチのダンスが正しく解読できたかどうかロボットを使って確認する話など、実験の現場の話もとても面白かった。■行動のしくみを一つ一つニューロンの働きに還元して理解したい

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2007年12月25日
読了日 : 2007年12月25日
本棚登録日 : 2007年12月25日

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