2017.5.9読了。映画『シング』で印象的だった楽曲“Golden Slumbers”で閃いてこの本に流れ着く。
伊坂作品は『魔王』以来久しぶりの2作目。
600ページ超とボリュームはあるが読みやすく、後半は一気呵成に読み終えた。…読み終えたのだが、心に深く刺さるものはなかった。
凝った趣向や技巧、計算された設定や伏線回収の妙といったものに見るべきところ、エンターテイメント性は確かにある。だが、通奏低音として流れる「監視社会批判」「戻らない青春」といったテーマがいかにも凡庸で、そして何より「悪役」の描き方が浅いのがどうしても気になる。いわば、ボーカルは良いが、ベースやドラムに難があって乗れない小説。
ちょうど10年前の作品だが、ドローン、スマホ、そして震災と原発事故の不在が、読む者に時の経過を気づかせる。
読み返すと、「俺が犯人だ」と言った不用意な発言をテープに録音されるくだりや、“イメージ”の例として「特製ホワイトソースのCM」が頻出することなどに気づき、なるほどと思う箇所はいくつかある。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2017年5月9日
- 読了日 : 2017年5月9日
- 本棚登録日 : 2017年5月9日
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