十字架 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社 (2012年12月14日発売)
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いじめを苦に自殺した同級生のフジシュン。"勝手に"親友になっていた僕と、いじめた奴ら、誕生日だった彼女。なぜフジシュンは最期にこの4人を選んだのか。

なにがどうなっていたらフジシュンは救われたのか、未だによく分からない。誰かが一言、「やりすぎだよ」「やめてやれよ」と声を掛けていればいじめはなくなったのだろうか。それとも止めに入った人が今度はターゲットになるのだろうか。将又、一緒にいじめられてしまうのだろうか。見て見ぬふりは自己防衛本能もあるだろう。野次馬精神も、あるだろう。フジシュンが死を選ぶことを分かっていたら、止めに入ったかもしれない。でももうそんなことを思っても、遅い。フジシュンは死んだのだ。それがどれだけ辛く重く、切なく悲しいことか、私は本当に分かっているのか。分かっている"つもり"なのではないか。いじめる側に立たないように、いじめられる側に立たないように、ただただ傍観していることのないように、いられるのか分からなくて怖い。本を読んだからといって綺麗事では済まされないものなのだ。ただいじめがなかったらフジシュンは自ら命を絶とうとは思わなかったのではないかとは安易に考えられる。なぜ、いじめは無くならないのだろう。

親は子供の言う学校、友達を信じるしかない。この目で見れないから、自分の子供を信じるしかない。うん、そうかそうか。だから毎日しつこいぐらい「今日は学校どうだった?楽しかった?誰と遊んだの?」なんて聞く。子供が嘘をついてることだってあるのに、それを聞くしかできない。自分の子供は幸せにすくすく育ってると思うしかないのだ。誰だって親に嘘をついたことくらいあるだろう。喧嘩してもちょっと転んだだけ、仲間外れにされても今日も友達と遊んだよ、小さい嘘なはずなのに親にとってはそうじゃないんだと思い知らされた。私は自分に子供が出来たら、子供の言うことをちゃんと信じてちゃんと疑ってやれるだろうか。自信は、ない。フジシュンは毎日楽しいよって言ってたのかな。

ゆるしてほしい、ゆるしたくない、ゆるせるわけがない。ゆるしてもらえなくていい。苦しいなぁ。だって答えなんか出ないじゃないか。正解なんてないじゃないか。
彼らの背負っている十字架を、私たちは絶対に忘れてはいけない。

最初から最後まで、ため息をつく間もほっと息抜く間さえも与えてもらえなかった。重すぎる。けど、歳を重ねても何度も読んで何度も大切な本だと思いたい。そして自分の子供の本棚にそっと置いておきたい。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2021年4月18日
読了日 : 2021年4月17日
本棚登録日 : 2021年4月17日

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