IoTとは何か 技術革新から社会革新へ (角川新書)

著者 :
  • KADOKAWA (2016年3月10日発売)
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感想 : 9
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坂村健氏と言えば私くらいの世代で情報処理を齧った人ならTRONプロジェクトを始めた人だと知らない人はいない人物。そんな人が今はIoTで何かやってるのかな?というのが本書を手にとったときの印象だった。いやまさか,「ユビキタス」から「IOT」までTRONの構想に含まれていたとは...。さすがの先見性と考えざるを得ない。とはいえ,元々の坂村氏の印象としては少々TRON自慢がすぎるところがあるので,本当のところは客観的な資料で確認したほうが良さそうだが。何しろこれだけLinux全盛の世の中において,いまだにTRONは負けたと思ってないようだし。リアルタイムOSと言っても,Linuxだってリアルタイムカーネルとかあるわけだし,Arduinoの普及で実験的な組み込みシステムはたくさん作られているわけで。まぁでも色々と勉強になる話はあった。RFIDもIoTの一翼を担っているとか。能動的にネットワークに接続されているものだけがIoTだと思っていた。ucodeなんて初めて知った。128bitで世の中のすべてのものにIDを割り振るとは凄い。128bitという空間がそれほど膨大だというイメージが付いてなかった。しかしなぁucodeの正当性はどう担保するんだろう。つまりなりすましのようなものへの対応だ。チェックサムのようなものをつけるとbitをその分使ってしまうし。
それからIoTでは末端の端末を直接クラウドに繋げると書いてあるがその場合家庭内でwifiなりに繋げるためのデバイスが必須になるわけで小型化に制限が出ないかとか,wifiの管理対象の機器が膨大になって色々困らないのかとか,気になることはある。
その他ちょっと印象に残ったフレーズを挙げておく。
「イノベーションというのは進化論の世界」要は数撃ちゃ当たる,かも?ってことか。それはそうだよな。声高にイノベーション,イノベーションと叫んだところで,凄いアイデアがうまい具合に空から降ってくることなんてそうそうないわけで。イノベーションが沸かないからと言って悩む必要はないわけだ。とにかくたくさんアイデアを出してみること。
「IoTは社会全体のロボット化」流石に上手いことを仰る。
「オープンデータが日本の社会と親和性が悪い」なるほどなとは思うが深刻な問題だ。こういうことこそ坂村先生のような権威のある方に打破していただきたい問題だ。
いくら技術があっても出口戦略ができていないと社会には出ていけない,という話も含蓄がある。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2021年12月26日
読了日 : 2021年12月26日
本棚登録日 : 2021年12月26日

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