遺影専門の写真館「鏡影館」にそれぞれの理由で集う人々。彼らのあいだには数十年に及ぶ因果が紡いだ縁が隠されていたことがわかっていく…、緻密に練り上げられた物語にどっぷりと浸かれる物語でした。
最初の短編で「えっ!?」という哀しさに打ちのめされたと思ったら、また違う意味での驚きが訪れ、そしてあれもこれもが繋がって、終盤にやっとすべてが明らかになっていく。ややこしくもつれた糸をこれだけ鮮やかに解き放つ手腕はさすがだなあと感じ入るばかりでした。
最近特に作者さんは抒情的な語り方をされていると思うのですが、今回もそういった側面が強く、かつての「どんでん返しありき」な印象はほとんどなくなりました。
この話も、登場人物たちの正しいとはけして言えない選択肢にもきちんと意味があるので、複雑な心情を抱かされます。
そして正しさを貫き切れない弱い人だからこそ、支え合ってつながり合って生きていかなくてはいけないのだろうな、と感じたのでした。
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- 感想投稿日 : 2018年7月16日
- 読了日 : 2018年7月15日
- 本棚登録日 : 2018年7月16日
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