豊饒の海 第二巻 奔馬 (ほんば) (新潮文庫)

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感想 : 295
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輪廻転生をモチーフとしる”豊穣の海”シリーズの第2巻。第1巻で恋煩いから自死を遂げた青年が転生して、ほぼ同じくらいの年齢で登場するのがいよいよ本書である。転生した主人公同様に、第1巻から約20年後にあたる本書では、第1巻で主人公の自死に関連した人物が年齢を取って再登場する。

そして恋煩いを中心とした物語であった第1巻に対して、右翼少年によるテロ計画が本書でのメインテーマである。鬱屈した世相に痺れをきらし、若者特有の純粋さでテロを起こそうとする主人公らの姿は今にして読み返せば、明らかに楯の会を率いて自衛隊駐屯地で自死した三島由紀夫自身の姿を想起させる。

結果として無惨に失敗した三島の蜂起を知っている我々は、本書でのテロ計画も同様の結末を辿るのかどうかを巡り、異様な緊張感を持って物語の進展を追わざるを得ない。その点で現実と虚構がリンクするような奇妙な世界を味わえる。

第2巻でも結果として主人公の青年は自死を遂げ、時代が進み第3巻『暁の寺』での転生に繋がっていく。この第2巻を熱中して読み進めた自身にとって、その熱量がますます高くなっていくことへの期待を禁じ得ない。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 日本文学
感想投稿日 : 2021年1月24日
読了日 : 2021年1月23日
本棚登録日 : 2021年1月21日

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