ブラック・スワン[下]―不確実性とリスクの本質

  • ダイヤモンド社 (2009年6月19日発売)
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本書の基本的なコンセプトである「ブラック・スワン」の特徴や、本来は確率が低くても甚大な影響が出ることを考慮しないといけないのに、多くの人が影響は少ないがそれなりの確立があることばかりを気にしてしまっているという問題など、多くは上巻で述べられており、下巻ではその論拠の補完と共に、「ブラック・スワン」が存在しない世界のみでその理論が構築されている統計学・モダンファイナンス・哲学などの空虚さを、独特のブラックユーモアで暴き出し、そうした空虚さに声を上げて反論することの大事さを教えてくれる(もちろん、空虚とはいえ、複雑な仮定のもとげ現実世界を矮小化することにより成立したモデル化/理論に対して、反論するのがとても大変だということも。やはり、ある理論の存在を主張するよりも、その理論が存在しないことを証明することの方が遥かに難しい)

つまるところ、リスクと不確実性を巡る議論は、個々人の世界認識の問題そのものであると思う。ブラック・スワンを気にする人と気にしない人の間にある差異は、単にリスクの許容度の高低という「量」を巡る差異なのではなく、この世界をどのように認識するかという「質」を巡る差異である。見ようとすれば見えるし、見ようとしなければいつまでもブラック・スワンは見えず、認識されない。

下巻も非常にスリリングで、大阪から札幌へ向かう飛行機の中でずっと読みふけってしまった。極めて高い知的興奮を与えてくれる充実の上下巻だった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ノンフィクション
感想投稿日 : 2014年9月13日
読了日 : 2014年9月13日
本棚登録日 : 2014年9月13日

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