永遠をさがしに

著者 :
  • 河出書房新社 (2011年11月18日発売)
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感想 : 161

図書館の原田マハさんの棚。
何度も見たはずの書棚なのに、初めて見つけたかな。
表紙の絵にやられちゃいました。
チェロ!

マエストロの父を持つ高校生の和音。
離婚した母が突然家を出ていったのは小学生の時。
物質的には恵まれていても、心が不安定な高校生。
そんな和音の目線で物語が語られます。

ボストン交響楽団に着任することになった父。
和音は頑なに日本に残ると言い張り、
そんな和音のもとに「新しい母」と名乗る女性が現れます。
真弓と名乗るその女性の出現で、生活が激変。
実は、真弓にも和音の母にも深い事情があり、
その事実を知ることで、和音の心が開かれていきます。
そして、内向きだった和音が「誰かのために」
やめてしまったチェロを手に、前を向き始めるのです。

まず出てきたのは、カザルスの「鳥の歌」。
かつて国連本部でこの曲を演奏した時、カザルスはこう言いました。
「私の生まれ故郷カタルーニャの鳥は peace、peace と鳴くのです」
そして、ドヴォルザークのチェロ協奏曲、バッハのG線上のアリア。
どれも素敵な曲ばかり。
チェロには個人的な想いが色々あって
何でもないところで涙腺がゆるんで、困った困った!

設定が特異で、気持ちが入らずに読んでいたのだけど
真弓の過去が明らかになるあたりから前のめり。
人って、自分のためには頑張れなくても、
誰かのためなら懸命になれるのですね。

人と人が響き合うことで生まれる音の世界。
原田マハさんには珍しい音楽の話ですが
絵画と同様、心が震えました。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 原田 マハ
感想投稿日 : 2023年2月5日
読了日 : 2023年2月5日
本棚登録日 : 2023年2月5日

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