沼地のある森を抜けて

著者 :
  • 新潮社 (2005年8月30日発売)
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本棚登録 : 1375
感想 : 220
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亡き母、そして叔母から伝えられた先祖伝来の家宝のぬか床を相続する羽目になった久美の日常に不思議な現象が起こるようになる。その正体と原因の解明のため、久美は叔母が生前交流のあった風野を訪ねていく…。ぬか床にまつわるほのぼのしんみり系ファンタジーと見せかけて入口は入りやすく、だけどだんだん踏み込んだら抜け出せない複雑で深い森のような沼のような科学と哲学とか宗教とか民俗学とかいろいろ混ざった世界に引きずり込まれて後戻りできなくなる。人間とか個の存在理由とか命の根本とか宇宙の起源から地球の生命の歴史とか、考えてみるとキリがなくわけわからなくなりそうな世界を果敢に根気強く物語の中にみごとに織り込んだという感じがする。久美や風野さんて梨木香歩さんの細胞が分裂して物語の中に登場してるのかも。(?)フリオと光彦のその後のことも知りたかった。「かつて風に靡く白銀の草原があったシマの話」のところはこの物語と平行したもう一つの物語なのだろう。平行して2つの物語が進行して交わっていくあたり村上春樹さんの「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」を思い出した。


ラストシーンはひたすら幻想的で荘厳で美しくて、そしてエロかったです。(こんなエロの表現があるのか…!)

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2018年4月22日
読了日 : -
本棚登録日 : 2018年4月17日

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