ままならないから私とあなた

著者 :
  • 文藝春秋 (2016年4月11日発売)
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本棚登録 : 1807
感想 : 270
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昔にはなかった新しいライフスタイルに焦点をあて、賛否両論やら疑問やら課題などを浮き彫りにするような小説2編でした。まず『レンタル世界』こちらは結婚式の披露宴に呼ぶ友達がいない時、友達に成りすました人たちをレンタルして場を丸く収めるというレンタル業があるというお話し。アニメ『おそ松さん』でレンタル彼女を視聴していて笑劇だったのでそういうのがあることは知ってました。利害が一致して危険性が無いならこれもありかも…と思えましたがおかしいでしょうか?それより主人公が高松さんにレンタル業やめて俺と真剣に付き合え云々と説教しているのがイラッときました。風俗利用してるあんたがその口で言うかい!?
そして2作目の『ままならないから私とあなた』。なにゆえにこのタイトルなのか考えながら読んでましたがなるほどの結末でした。
合理性を追求して便利になることそのものは悪いことではないかもしれませんが、行き過ぎは人間らしさを損ないますよね。薫の行動はそういった意味で違和感MAXで、う~ん…としばし考えてしまいました。作曲家を目指す親友雪子に向かって、これならあなたが楽にあなたらしい曲が作れるよ。どうかな?って。え、これ、喜べますか?私が雪子の立場なら猛反発です。怖いのは雪子が何故反発するのか薫が理解してないところです。こういう人、現実にいるのでしょうか?いたとしてもクリエイターの領域を侵害しないでほしいですね。
現にAIを利用して、星新一さんの作品を分析してショートショートを書くプロジェクトなんかもあるそうですが、あくまでそれは星新一っぽいショートショートであって亡くなった星新一の新作ではないんですよね?あくまで星新一っぽいだけ。イラストやデザインなどでも今はコンピュータで作れてしまう時代ですけど、だからデザイナーやイラストレーターはいらないのかというとそうではない。そうではないけどコンピュータで作れれば便利だと思う人がいて使う人がいる。クリエイターと人口知能の共存というか棲み分けが、まだその駆け出しである今の時代に課題になっているので、このような作品を朝井リョウさんは生み出したのかもしれませんね。
もやもやしましたが、ラスト少しに希望を感じました。雪子と薫がうまくわかりあえるといいな。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2019年9月7日
読了日 : 2019年9月7日
本棚登録日 : 2019年9月3日

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