かのこちゃんとマドレーヌ夫人 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA (2013年1月25日発売)
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本棚登録 : 5204
感想 : 613
4

タイトルで読まず嫌いしていたのはとてももったいなかった。
マドレーヌ夫人が猫だったとは。
猫たちの様子が大変素晴らしく、大島弓子さんの「サバ」や「グーグー」のシリーズを思い出す。猫たちは常に気品高く生きているのだ。
そしてさすらいのマドレーヌ夫人がかのこちゃんの元にとどまったのが、玄三郎との夫婦愛であった、というのもまた素晴らしい。なんでも、本当に一緒に暮らしている犬と猫がいたらしい。たぶんその猫も「外国語」(犬の言葉)がわかるのだろう。
猫にとって犬の言葉は理解できない外国語である、という発想が新鮮だった。マドレーヌ夫人と玄三郎の関係は自立していて、お互いを尊重しあっている。その姿が美しい。
そして、かのこちゃんとすずちゃんが友達になっていく過程が、遠く過ぎ去った子ども時代を懐かしく思い出させてくれる。
「難しい言葉」対決が愉快で、このあたりのチョイスが万城目学さんらしい。
仲良くなった友達が離れていくこと、歯が抜けること。まだ人生の年数が浅いかのこちゃんたちにとっては非常に重大な事件なのである。その重要性がとてもよく伝わってきて、すずちゃんとの別れの場面ではもらい泣きしてしまった。
玄三郎の死の場面では、「死んでいくこと」とはどういうことか、それを看取るとはどういうことかをマドレーヌ夫人がきちんと教えてくれる。
猫股による冒険譚に胸が踊った。
とてもこじんまりした作品ながら、精巧に作られていて、大切にしたい宝物のような世界だった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 新刊
感想投稿日 : 2013年2月14日
読了日 : 2013年2月14日
本棚登録日 : 2013年2月14日

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