宮部さんの少年シリーズ(と私が勝手に呼んでいる)。1991年作。
とても綺麗な作りで、あまり嫌な感じが表面に出てこない。
マスコミネタになるような事件に巻き込まれたときの、身内の反応、近所の反応、世間の反応などは、後になればなるほどリアルに詳しく書き込まれるようになるが、このあたりではまださっくりと書かれているにとどまっている。
放浪の株屋澤村の最後の大博打の話が、さわやかなファンタジーとして描かれていて、なんとなくさらっと読み流せてしまう。
しかし、後でよくよく思い出してみれば、父親の緒方行雄という男は、そこまでするような男なのかという疑問が湧いてくる。若い頃から浮気ばかりして、そのくせ自分を棚に上げて妻を疑いなじるなんて、それだけで愛想を尽かしてもおかしくないと思う。ちょっと取り乱したくらいで許せるなんて、なんだか信じられないと思ってしまった。ずっとぎくしゃくしてきた夫婦なのになあ。
まあ、そこが一世一代の大博打、ということなのかもしれない。
それにしても島崎くんはすごい。スーパー中学生である。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2012年9月12日
- 読了日 : 2012年9月12日
- 本棚登録日 : 2012年9月12日
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