ニッポンの思想 (講談社現代新書)

著者 :
  • 講談社 (2009年7月17日発売)
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本棚登録 : 973
感想 : 83

元々、佐々木氏の批評や活動、特にWeatherレーベルのファンだったので、本書を見かけたときに即購入だった。
近代哲学が辿ってきた歴史が、非常に分かりやすくまとめられていたと思う。
これが、「批評家」の目線なのかと改めて敬服した。

それぞれの「点」を詳細に眺めつつも、そこだけに囚われるのではなく、対象との間隔をじりじりと広げながら、対象を取り巻いている「関係」にも着目する。
それ単独で成立する思想というのは、基本的には有り得ない。
そこに至る過程や、その背景を踏まえていなければ、その思想が何を語っているのかを理解することすら出来ない場合も多い。
しかし一方で、その思想へ影響を及ぼしている部分を切り離して、思想そのものの特異性を見極める必要もある。
この両面からのアプローチをバランスよく混ぜ合わせることが、その思想の意義を理解するために最も必要になることだと思う。
本書は、そのバランスの取り方が非常に巧く、専門分野の深淵を華麗に躱しながら、そのエッセンスを上手に抽出して流れを追っている。
それぞれの時代に発された思想から、「その時代」の要点を体現している思想家を取り上げることで、話の筋が拡散してしまう事態を上手に防いでいた。

近代思想は、なんとなく薄っぺらい感じがしていたのだけど、本書を読んで、その認識は改められたように感じる。
やはり、思想というのは繋がっていて、きちんとした理由に基づいて進んでいるのだなと再認識できた。
それぞれの共通項を探りつつ、それぞれが打ち出した「新しさ」をクローズアップしていくことで、近代思想の辿ってきた道が明確にされている。
これが「批評家」の視点というものなのか、と感心した。

あとがきにて発表されている『未知との遭遇』の発売が楽しみ。
どのような「思想」を見せてくれるんだろうな。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 本・雑誌
感想投稿日 : 2018年11月13日
読了日 : 2009年8月13日
本棚登録日 : 2018年11月13日

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