未来型サバイバル音楽論: USTREAM、twitterは何を変えたのか (中公新書ラクレ 370)
- 中央公論新社 (2010年11月1日発売)
全方位に渡る様々な視点から音楽業界の移り変わりを丁寧に追いかけた一冊。
ここ数十年に渡る音楽業界の変遷がよく分かった。
ひとつの場所に留まったことが殆ど無く、常に変化し続けている業界なのだな。
音楽は、書籍や絵画と違い、形に依らない芸術だからこそ、ここまで多彩に変化をしているのだと思う。
コンテンツとメディアという対比が、最も鮮やかに見えるのも特色のひとつ。
例えば書籍は、昨今は電子ブックの登場で変化が起ころうとはしているものの、その本質はグーテンベルグの時代から変化はない。
けれど音楽は、(技法はさておき)メディアとしての変遷は根幹から変わり続けている。
その変わり続けてきた業界の姿勢を、一つずつ丁寧に取り上げていく本書は、その本質を浮かび上がらせることに成功していると思う。
つまり、コンテンツとメディアの親和性が低いこと、メディアによってコンテンツが変化し、コンテンツによってメディアが変化していくということ。
お互いがお互いに影響し合い、螺旋状に進化を続けているということ。
特に、第4章で丁寧に取り上げられた「媒体」が移り変わっていく様子は、改めてその速さと激しさに感心した。
ここまで急激な変化が起こり続けていれば、法整備が遅れるのも宜なるかなと。
音楽業界でマネタイズを行う人はもちろん、ビジネスとは関係のない、単なる音楽好きにとっても、業界がどういう状況にあるのかという知識として、本書は読まれるべき本だと思う。
ミュージシャンが生活できる環境があるからこそ、音楽好きは、その音楽を享受できるわけだから。
これからは、表現者と観覧者という二極ではなく、双方が一体となって業界を支えていくような仕組みが重要になってくるのだろうね。
牧村氏が最後に語っている部分に心から同感した。
<blockquote> 音楽は時間をかけて、ひょっとすると言葉と同じものになるかもしれません。</blockquote>
音楽は、「ことば」だと思う。
- 感想投稿日 : 2018年11月13日
- 読了日 : 2010年12月18日
- 本棚登録日 : 2018年11月13日
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