コクーン

著者 :
  • 光文社 (2016年10月18日発売)
3.21
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本棚登録 : 216
感想 : 58
5

距離も時間も想いも越えて、金色の蝶がそれぞれの景色をつなぐ。

いろんな人生のひとときを切り取ったピースをパズルのように組み立てていく構成です。
陰鬱で荒廃した灰色の世界が主ですが、パラパラと散らばる友情や愛情、甘いお菓子の香りが、じんわり温かい色の染みを作ってくれるイメージでした。

ピースのひとつに私たちの存在するこの世界もチラッと顔を見せることで、読者の自我すらも黄金蝶の夢の一部なのかもしれないという不安に囚われる。作品の世界に浸る効果的な要素だと感じます。
変わった装丁で、ラストはカバー裏に印刷されているのですが、おいっ!ってなりましたね。これがそこに繋がって、それが、そうなるかね!って。穏やかに終わろうと思ったのにー。好きですけど。映画館でエンドロールの後に1シーン放り込まれてる感じですね。

「絶叫」は、 すべては必然であり、己で選びとれることなんかひとつもない。分岐のない一本の線の上を転がっていくだけ。 今と過去は一直線、今と未来も一直線。そういう物語だったけど、この物語には分岐、ifが存在しています。
あくまでifの主観はその瞬間の自己なので結局は必然の中に生きているという結論になるのだろうけど、黄金蝶の存在がある以上、この作品は無数のifの散らばりを俯瞰で見ることを許してくれているのだと思います。

まだ2冊目ですが、この作者は伏線のヒントの出し方が絶妙だと思う。100人が読んで100人が気づいてしまう描き方は、物語の重厚感を損なうし、難解すぎると読んでいて入り込めないない。個人個人の読解力の問題だとは思うけど、自分にはちょうどいい湯加減。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2017年1月12日
読了日 : 2017年1月12日
本棚登録日 : 2016年12月21日

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