鬼道の女王 卑弥呼 上 (文春文庫 く 1-33)

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  • 文藝春秋 (1999年11月10日発売)
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170年頃。中国では後漢時代。倭の国の戦乱を避け中国にわたった者の中にヒミコ等一行がいた。
そのころ中国でも五斗米道の乱や黄巾の乱などがおこり,戦乱に会うことは避けられなかった。
このため,日本に帰ったヒミコ等は倭の国の戦乱を収束すべく,倭国統一に踏み出したというストーリー。
ヒミコは後,3国時代を収束させた魏の国から親魏倭王という印をもらい,これにより倭国の王として
吉備や大和地方の国々に認められていったといえる。これは,その印の重要さが認められる識者がいたということで,
それは中国から倭の国に渡ってきた渡来人であろう。
初期の邪馬台国を大国にしていったのはヒミコの鬼道(祈祷等の神事)による予知能力であろうが,晩年はヒミコの巫女能力も薄れ,親魏倭王の印によるものと思われる。
物語には創作と思われる人々も登場するが,恐らくそのような人物がいたであろうと説得感があり,また,ヒミコの女性としての脆さなども垣間見られ,はるか昔の日本の情景を間近に感じさせてくれるものである。
ただ,ナショーメ(難升米),ヤクヤク(掖邪狗),イショーギ(伊聲耆)サイシ(載斯),ウオチ(烏越)などは実在したと思われ,中国の書物にも登場する。
ヒミコを卑弥呼等蔑視するような漢字が当てられているのは,中国の他国蔑視の思想によるものであろう。
物語には邪馬台国を敵視する狗奴国や隼人国など九州南部の国々も登場し,その国が武力だけでなく,免田式土器のように優美な土器を製作できる感受性も備えただ野蛮な国ではなかったここが伺える。狗奴国は大和朝廷にまで抵抗することと明治維新等を鑑みると,この地域の人々の魂は幕末の薩摩藩の藩風にまで影響しているのではないかとも私は思う。
卑弥呼亡き後は台与(とよ)が登場し,巫女王として君臨する事になるが,本書では台与以降については詳しくふれていない。
全2巻。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 日本史
感想投稿日 : 2009年2月8日
読了日 : 2009年2月8日
本棚登録日 : 2009年2月8日

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