巨象も踊る

  • 日経BPマーケティング(日本経済新聞出版 (2002年12月1日発売)
3.74
  • (138)
  • (180)
  • (235)
  • (19)
  • (5)
本棚登録 : 1908
感想 : 188
3

以前にブックオフで安く購入したが積読状態になっていたため、今年最初の1冊として先日読了。

メインフレーム(大型汎用機)事業の成功以来、圧倒的な地位を確立したIBMだが、それがいつしか市場の重要性を忘れさせ、外部から影響を受けない内向きの社風が作り出されていった。
その後PC市場が急速に拡大。IBMは先駆者ながら心臓部のソフトをマイクロソフト、CPUをインテルに任せてしまったため先駆者利益を得られず、次第に会社は巨額の赤字を計上、泥沼化していった。

そのような状況でCEOに就任したルイス・ガースナーは「今現在のIBMに最も必要ないもの。それはビジョンだ」とし、実効性の高い戦略と迅速な実行を宣言。
当時は業界全体に標準規格がなかったため、「断片をまとめて価値に変える」ことこそIBMが果たすべき役割と考え、会社分割はせず、将来のネットワーク社会を見据えた統合ソリューション提供企業を目指し、”巨象”を再び躍らせるために様々な手段を講じていく。

一番苦労し、時間をかけたのが企業文化の変革とガースナーは語る。
難しいこと、痛みの伴うことをやらねばならないのであれば迅速に実行すべきであり、具体的に何を、そしてなぜやるのかを周知徹底することが重要。危機に直面している事実を公に認め、社員に認識させる。そのためにはCEOが絶えず社員の前に出て、わかりやすく簡潔でしかも納得できる言葉で話し、組織全体が考え、行動を起こすように促す努力を情熱を持って何年も続けなければならない(幹部や社員に向けての具体的なメール内容が巻末に掲載されている)。

素晴らしい本であるとは思うが、構成が「戦略」や「企業文化」といった項目に分けられているため、ややストーリーが分断されてしまっている感がある。
その点で、三枝匡の『戦略プロフェッショナル』『V字回復の経営』、小倉昌男の『小倉昌男 経営学』といった本ほどには引き込まれることはなかった。話の規模が大きすぎるため、読んでいて臨場感があまり沸いてこなかったせいもあるかもしれない。

しかし、ポーターやハメルらの論理のケーススタディとして、そして「企業文化こそが経営そのもの」というどこか日本的な考え方も含め、大変有用であり教科書になる一冊であると思う。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ビジネス・経営
感想投稿日 : 2016年1月28日
読了日 : 2016年1月28日
本棚登録日 : 2015年12月25日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする