文鳥・夢十夜 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
3.69
  • (392)
  • (454)
  • (771)
  • (51)
  • (13)
本棚登録 : 5699
感想 : 491
5

折角紹介するならみんなが実際に読んでくれたらいいなと思ったので、だいぶ短めの小説を選びました。検索するとすぐに本文や、朗読動画などが出てくるのでオススメです!

「夢十夜 」夏目漱石

[作者について]
作者は大正時代に活躍した作家である、皆さんご存知の夏目漱石です。代表作は「我輩は猫である」「坊っちゃん」「こゝろ」など、教科書に載っているものもあり一度は彼の作品を読んだことがあると思います。彼の手掛ける作品の特徴は、世俗を忘れて人生をゆったりと眺めようとする、当時では主流の自然主義と対立した「余裕派」と呼ばれたものです。
知っている方も多いと思いますが、夏目漱石というのはペンネームで本名は夏目金之助と言います。故事の「漱石枕流(ざっくり言うと負け惜しみの強いことを表す)」から取ったということを、中学の授業で習ったのを未だに覚えています。頑固者で自分のことを変わり者と思っていた漱石は、こんなペンネームにしたそうです。

[作品について]
この作品は1908年に10日間にかけて東京朝日新聞で連載され、漱石にしては珍しいジャンルのファンタジー色の濃い作品です。なんとも説明しづらい内容ですが、新潮文庫版のあらすじには意識の内部に深くわだかまる恐怖、不安、虚無などの感情を内面から凝視し、〈裏切られた期待〉〈人間的意思の無力感〉を無気味な雰囲気を漂わせつつ描き出した。とあります。ちなみに、この小説を書いた前年に漱石は教職を辞して胃病を発症しています。本文は内容が全てバラバラのオムニバス作品になっていて、一夜一夜で全くの別作品で楽しめます。個人的には薄暗く、ぼんやりとしたイメージの作品だと思います。第一夜、第二夜、第三夜、第五夜の書き出しである「こんな夢を見た」というのが有名なフレーズだそうです。

[感想]
このお話は作品単体を楽しむだけでなく、作者のその時の境遇、時代背景を含めて内容に思いを巡らせることで二重にも三重にも考察できる作品になっていると感じました。正直あらすじにすると全く意味のわからない話だと思いますが、自分の想像力や思考力が試される作品だと思います。
短編なのであらすじを詳しく書くと読む楽しさが半減してしまうためざっくりとした紹介しかできなかったので、気になる方は是非読んで頂ければと思います。個人的に好きなのは第二夜、第三夜、第九夜です。暗い話があまり好きではない方は、第一夜なら比較的読みやすい気がします。
いま暗い世の中だからこそ生じる負の感情から逃げたりするのではなく、この作品を通して今の自分の負の感情と向き合ってみるのも良いのではないでしょうか。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2021年12月6日
読了日 : 2021年12月6日
本棚登録日 : 2021年12月6日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする