最終章はバタイユの「マダム・エドワルダ」。かなりエロな内容なのであるが、鹿島先生の解説が見事でウムウムと唸りながら読ませる。
おかげで、映画「ビフォア・サンライズ」ではデルピーが冒頭から「実は私はファム・ファタルよ」宣言をしているのだと納得。
この本の各章にあるファム・ファタルタイプが画家ムンクを取り巻く多様な女性像に符合し、以前見たムンク展の理解の助けとなる。「椿姫」の章、20世紀前半まで未婚の女性とは会話すらNGだったから、人妻と付き合うのは当然の成行だったと、こんな知識も盛り沢山。
「このアンビヴァレンスがくせ者です。恋愛においては、羞恥心を最も効果的に使った女性が最終的に勝利を収めるということを忘れないようにしてください」などとファム・ファタルを目指す方(笑)への指南書となっているのが面白い。実に名著。
ファム・ファタルという言葉は「宿命の女」と訳されるが、ニュアンスをつかみきれていないとある。ファタルには「宿命的、運命的」という意味もあるが「致命的、命取りの」という意味もあり、ラルースにもある「破滅をまねく女」というのが妥当であると。
読書状況:読み終わった
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文化
- 感想投稿日 : 2022年5月20日
- 読了日 : 2022年5月20日
- 本棚登録日 : 2022年5月20日
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