フリアとシナリオライター (文学の冒険シリーズ)

  • 国書刊行会 (2004年5月1日発売)
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感想 : 20
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ラジオ局でニュース記事を書いている“僕”バルガス・リョサは小説家志望の学生。そこに売れっ子ライターのペドロ・カマーチョがやってくる。彼は変り者でパワフルでどこかしら滑稽だけれど、シナリオライターとしては超一流、一度に9本のラジオドラマを書き、その全てが大ヒット。
その頃僕の家に離婚した叔母さん(叔父の元妻なので血は繋がっていない)のフリアがやってくる。フリアは「デートして分かったわ、あの議員インポよ」「小説家になりたいなんてあなたオカマなんじゃないの」なんて僕をからかう10歳年上の女性。僕はフリアをデートに誘い、二人の関係は着実に進む。
カマーチョのシナリオへの熱狂を見て僕は「小説のためだけに日常全てをささげる作家になりたい」と決意を固めるんだけど、カマーチョはあまりの忙しさにだんだん錯乱。それぞれのラジオドラマは錯綜し、お互いの登場人物は別の物語に行ったり来たり、挙句に未曾有の大災害やら事故やらで皆みんな死んでしまう。
僕のプロポーズにフリアは「約束して、5年は私に飽きないで、そうすればバカな事してもいいわ」と了解してくれた。親戚の大反対を避けて田舎でひっそり結婚式。
僕たちの結婚は周りの予想よりずっと長く9年間続いたんだ。その間はずっとうまくいっていたんだよ。
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バルガス・リョサの半自伝的小説。
最初の妻は叔母、二番目の妻は従姉妹、ってすごいなラテン男。
ペルーでは、フリアご本人からの逆暴露本「バルギータスの書かなかったこと」(バルギータスはバルガス・リョサの愛称)が出版されたんだそうな。ずっとうまくいっていた、とはいかなかったようで。
小説の書き方は、フリアとのラブロマンスの進展や小説家を目指す青年の将来への決意などを中心とした現実部分と、ペドロ・カマーチョの書くシナリオとが一章ごとに交わっている。シナリオはいくつもの話をいいところで「次回へ続く」で先に期待させ、後半はすべての登場人物ぐっちゃぐちゃの大災害へとハチャメチャ展開になりこれがなかなか楽しい。ハチャメチャにならない展開もそれぞれ読んでみたかったんだが。
映画化もされているらしい。バルガス・リョサ役がキアヌ・リーブス、カマーチョ役はピーター・フォーク。見てみたいんだけど放送してくれないだろうか。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ●南米長編
感想投稿日 : 2010年10月14日
読了日 : 2010年10月14日
本棚登録日 : 2010年10月14日

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