まるまるの毬

著者 :
  • 講談社 (2014年6月25日発売)
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本棚登録 : 742
感想 : 140
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お江戸の小さな和菓子屋さんの話です。
全国各地の菓子を作って出すという変わった店で、すぐに売り切れてしまうという。

麹町にある「南星屋」は人気の店。
主人の治兵衛が諸国を修行して歩いて覚えた菓子を2つ3つだけ選んで作るため、珍しい菓子が食べられるのだ 。
この治兵衛、もとは武家の次男という出身だが、子供の頃からの菓子好きがこうじて、この道を選んだ。
裏通りの小さな店を親子3代でやっています。

娘のお永は出戻り、菓子に関しては驚異的な記憶力がある。
孫のお君は、花嫁修業中の元気な看板娘。
ちょくちょく訪ねてくる和菓子好きの高僧は、治兵衛の弟。
献上の品を巡って大名との縁ができたり、問題が起きたり。
お君が心通わせた相手と、まとまりそうになったのですが‥

次々に出てくるお菓子がどれも美味しそうで、季節感を大事にしていること、当時の工夫や楽しみにしている様子、微笑ましくも羨ましい限り。
武家の息子が菓子屋になれる、跡取りでなければある程度の融通がきくところもあったのですね。
旅といっても難しい時代に、各地を回るほどの熱意があればこそ、かもしれませんが。

治兵衛には実は出生の秘密があり、これが後々まで思わぬ不自由さにつながる、そういった時代の厳しさもあります。
ほろ苦いものもありましたが、家族が思いやり支え合う、ほのぼのした読後感に和みました。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 時代小説
感想投稿日 : 2018年3月7日
読了日 : 2016年8月30日
本棚登録日 : 2018年3月7日

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