お江戸の小さな和菓子屋さんの話です。
全国各地の菓子を作って出すという変わった店で、すぐに売り切れてしまうという。
麹町にある「南星屋」は人気の店。
主人の治兵衛が諸国を修行して歩いて覚えた菓子を2つ3つだけ選んで作るため、珍しい菓子が食べられるのだ 。
この治兵衛、もとは武家の次男という出身だが、子供の頃からの菓子好きがこうじて、この道を選んだ。
裏通りの小さな店を親子3代でやっています。
娘のお永は出戻り、菓子に関しては驚異的な記憶力がある。
孫のお君は、花嫁修業中の元気な看板娘。
ちょくちょく訪ねてくる和菓子好きの高僧は、治兵衛の弟。
献上の品を巡って大名との縁ができたり、問題が起きたり。
お君が心通わせた相手と、まとまりそうになったのですが‥
次々に出てくるお菓子がどれも美味しそうで、季節感を大事にしていること、当時の工夫や楽しみにしている様子、微笑ましくも羨ましい限り。
武家の息子が菓子屋になれる、跡取りでなければある程度の融通がきくところもあったのですね。
旅といっても難しい時代に、各地を回るほどの熱意があればこそ、かもしれませんが。
治兵衛には実は出生の秘密があり、これが後々まで思わぬ不自由さにつながる、そういった時代の厳しさもあります。
ほろ苦いものもありましたが、家族が思いやり支え合う、ほのぼのした読後感に和みました。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
時代小説
- 感想投稿日 : 2018年3月7日
- 読了日 : 2016年8月30日
- 本棚登録日 : 2018年3月7日
みんなの感想をみる