アルモニカ・ディアボリカ (ミステリ・ワールド)

著者 :
  • 早川書房 (2013年12月19日発売)
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感想 : 111
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好評だった「開かせていただき光栄です」の続編。
18世紀後半の英国での事件をムードたっぷりに描きつくします。

あれから5年。
連続殺人事件の後、解剖医ダニエルのもとを二人の愛弟子エドとナイジェルが去った。
解剖学教室はほぼ閉鎖され、暇になった弟子たちアル、ベン、クラレンスは、盲目の治安判事ジョン・フィールディングのもとに集い、犯罪情報を載せる新聞の発行を準備していました。

解剖学のさきがけとなった奇人ダニエル・バートンは実在の人物。
盲目の判事というのも作り話のようだけど、実在していたんですよね。
当時はまだイギリスには公的な警察組織がなく、まともな裁判は行われていなかった。
賄賂を出せるかどうかで判決が決まってしまうほど。
事態を憂える判事は自宅を公邸とし、裁判もそこで行っていました。
判事の姪で目の代わりとなるアンも、活躍。
すがすがしさが救いとなっています。

悪魔を呼び出すという楽器アルモニカ・ディアボリカがあるという噂‥
天使が羽を広げて落ちていくのを見たという出来事‥
後に遺体が発見され、天使と見間違えたとされるが、そこには謎が?

見世物小屋でケンタウロス(半人半馬)となっている男。
行方の知れない恋人を探し続ける娘エスター。
ガラス職人がフランクリンに依頼されたこととは。
一方、精神病院ベドラムで繰り広げられた暮らしも挿入されます。
医療も未発達な時代、精神病院に入っても治療とは名ばかり、監禁が目的の場合すらあったという。
さまざまな段階で絡み合う人々の運命、それはやがて‥?

18世紀の話だから訳語が古いのは仕方ないよなとか、硬くて読みにくくても仕方ないよな‥とか、ふと思ってしまったり。
いやいや、21世紀の日本人が書いた小説なんですが。
時代色たっぷりで、惜しげなく熱筆がふるわれ、引き込まれます。
恋人達の再会はほっとしますが、哀しい別れも‥
全部ハッピーとはなりえない設定でしょうけど、切ないですね。
皆川博子小説ならではの読み応え、ありました!

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 歴史ミステリ
感想投稿日 : 2015年2月8日
読了日 : 2015年2月1日
本棚登録日 : 2015年1月24日

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