西洋菓子店プティ・フール

著者 :
  • 文藝春秋 (2016年2月12日発売)
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下町のケーキ屋さんを舞台に描く人間模様。
ものすごく美味しそうなスイーツと絡めつつ、視点が変わるたびに文体も変わる連作短編です。

寂れかけた商店街にある、昔ながらの西洋菓子店プティ・フール。
懐かしい味のお菓子をきっちり作るじいちゃんの店に、
本格的なスイーツを創作もする孫娘・亜樹が加わりました。
店番には、優しいばあちゃんも欠かせない。

子供の頃から祖父母の店が大好きだった亜樹。
中学の時に美しい同級生と親友になり、魅入られるようなひとときを過ごした鮮烈な思い出。
その子のために、初めて菓子を自分で作ったのでした。

クールな先輩だった亜樹に憧れている若いパティシエの澄孝。
亜樹が店をやめた後も気になって仕方がなく、勉強のためのケーキ屋巡りのついでを装って、亜樹のいる店を訪れます。

澄孝のことが好きなミナは、ネイリスト。
綺麗なものが大好きで、オシャレには気が入ってます。
まったくの片思いと知りつつ、澄孝に付き合い‥?

店の常連客の美佐江は、悩みを抱えている様子。
店にあるお菓子を大量にまとめ買いしていく。おそらくは‥
そんな買い方を亜樹は断りたい気持ちだったが‥

亜樹の婚約者は、人のいい弁護士の祐介。
大手事務所をやめて、今は商店街にある小さな事務所でご近所の人の愚痴を聞くことも。
仕事に打ち込む亜樹に惹かれたのだが、しだいに亜樹との間にずれを感じて‥

それぞれに大事にしているもの、打ち込むものがあり、その上での動揺や変化があります。
軽薄にも見られかねない若い女の子ミナが、やりたいことがはっきりしていて、気持ちいいですね。
うじうじしていた美佐江さんも、最後には?

仕事一途な亜樹は職人気質というより、天才肌のアーチスト的な印象。
まだ若くとんがっていて、時には周りが見えない。
片思いの連鎖はわかりやすいけど、それで‥
微妙にすっきりしないのがなんでかなと考えてましたが、この終わり方だと、亜樹自身が何をどう受け止めたのかがはっきりしないからかも。
じいちゃんの指摘はキビシイけど、なんとも的確ですね。
そんなじいちゃんの隣を歩いてきた、ばあちゃんの余裕も、とても素敵。

亜樹の作る濃厚なスイーツを、特別な日に、優雅なお店で食べたい!
ただ毎週食べたいのは、じいちゃんのシュークリームでしょうね☆

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 国内小説
感想投稿日 : 2017年11月6日
読了日 : 2017年1月20日
本棚登録日 : 2017年11月6日

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