人気シリーズの14作目。
ただし、初の文庫書下ろし。
8作目の「我、言挙げす」のラストで火事があって家を無くした伊三次とお文一家。
9作目「今日を刻む時計」では、10年がたっていたのです。
この10年間の空白に起きた出来事を描く内容になっています。
伊三次の妻で芸者のお文は、父親を知らずに育ちましたが、しだいに察してはいました。
お座敷の客として訪れた侍の海野との偶然の出会いから、互いにそれと気づきます。
さっぱりした気性のお文の、胸のうちに秘めた思いが切ない。
互いに名乗りはしないまま、手を差し伸べてくれる実の父親の気持ちを受け取ります。
祖父とは知らずに懐いていたお文の息子の伊予太。
子供の言葉がタイトルというのもいいですね。
一方、不破の息子龍之進ら奉行所の見習いの若い者らは、無頼派を名乗る若者集団を追っていました。
事件が落ち着いた後にふと出会い、互いを認め合う成り行きがまた妙味があります。
伊三次が焼け出されて、お文と離れていた時期の出来事。
不破友之進の妻いなみの、年を重ねた妻の思い。
一捻りした味わいが深く、読んでいてこちらも江戸市中をさまよい、人の心にまで共感したような心地になりました☆
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
時代小説
- 感想投稿日 : 2017年1月23日
- 読了日 : 2016年2月27日
- 本棚登録日 : 2017年1月23日
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