小春日和: インディアン・サマー (河出文庫 か 9-1 文藝COLLECTION)

著者 :
  • 河出書房新社 (2010年8月3日発売)
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本棚登録 : 558
感想 : 61
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「快適生活研究」を読んで、さかのぼって登場人物がだぶる作品を読んでいます。
金井さん、外れないですねー!

大学1年の桃子と、友達になった花子、桃子の叔母のちえこ。
3人の女性の出会いと~何気なくリアルな生活。

大学に入学した桃子は、母の妹のちえこの元で暮らすことになります。
東京の大学に通うのに、女の子を一人暮らしさせるわけにはいかないと、母が決めてしまったのです。
桃子の母のことをコンサバという叔母。
母が保守的なのは事実で、家業の旅館を継いでいる長女だからか。桃子の弟が上京したら、一緒に住んで弟の面倒を見るものと決め込んでいるのだから。
ちえことは気が合う桃子ですが、やはり突然一緒に生活するのには気詰まりな面も出てきて当然でしょう。厄介者なのではないかと距離感を考える桃子。

ちえこは作家で、友達には華やかな生活を想像されて、羨ましがられます。
更年期の上に中高年性ウツ症だからというおばさんは、ほとんどいつもゴロ寝しているのだが。
日常生活の中で唐突に締め切りに苦しむ様子が、傍目にもわかる次期があった後、彼女が書いた作品が載っています。
桃子との生活や最近の経験がどこかしら反映しているのが、また微妙に面白い。
ちえこが自分も若かった頃を振り返ったり。

桃子の両親は離婚していて、父親は東京にいる。
フラワー・アーチストと同居しているということだったが、電話では素人とは思われない声。会ってみたら男性だった…
などという世界が変わるような出来事もありつつ。…いや、でも別に世界は変わらない?

ちえこは1ヶ月か2ヶ月と言って海外旅行に出かけ、桃子の母は無責任だと怒る。
桃子はすっかりゴロ寝にはまって最初は家に引きこもる。
ちえこは意外にも、誰かと一緒らしい…

心地良い女の子の世界。
作者なりの「少女小説」を書こうとしたものらしく、少女小説の基本を押さえた部分と、わざと外した部分と。
親元を離れて叔母の元へ、って確かにあるパターンですね。
そして、親友が出来て!
中学生の男の子のように見える小柄な花子が、かわいい。
初めてのことにわくわくしたり、スランプのような時期もあり、ちょこっと成長する経験もあり。

おかしな経験を、あれこれ喋りまくる口調でどんどん描かれます。
「快適生活研究」ほど全編爆笑ものではないけれど。
共感と微苦笑と~時には吹き出します。
下宿して、友達とえんえん長話をしていた学生時代を思い出しました。
というか~ゴロ寝しながら読んだので、ちえこと桃子のゴロ寝にすっかりシンクロしておりましたよ。

著者は1947年、高崎生まれ。
67年、「愛の生活」で小説家デビュー。
この作品は88年、単行本化。

読書状況:未設定 公開設定:公開
カテゴリ: 国内小説
感想投稿日 : 2012年7月19日
本棚登録日 : 2012年7月14日

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