森の中に埋めた (創元推理文庫)

  • 東京創元社 (2020年10月30日発売)
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本棚登録 : 183
感想 : 25
5

オリヴァー&ピアのシリーズも8作目。
重厚な部分と、生き生きと親しみやすい部分を兼ね備えたシリーズです。
前作「生者と死者に告ぐ」はミステリとして枠組みがユニークで、スピーディな展開と感じました。
今作は、オリヴァーの過去に関わる、シリーズ中でも重要な作品です。
こういう展開になることを見据えて書かれていたシリーズだったのだなあと認識を新たにしました。

オリヴァーは、主席警部。
長身で男前の、性格もなかなかいい方の50代。
少し年下のピアは部下で、相方、金髪で明るい性格。恋人というわけではないのですが、夫婦よりも一緒にいる時間が長いほどでもあり、信頼し合う間柄です。
キャンプ場でトレーラーが爆発、放火事件とわかります。トレーラーの所有者は高齢で施設にいましたが、そこでも事件が。
さらに‥
オリヴァーの住む地域で、怪事件が起きていくのです。

オリヴァーはフォン・ボーデンシュタインという貴族の家系の出で、今は昔のように領地があるわけではありませんが、城では弟がレストランを経営、観光地となって存続しています。
村人は皆、子供の頃からよく知っている人ばかり。
実は40年も前に、少年の行方不明事件がありました。ロシアからの移民の子で孤立気味でしたが、オリヴァーは守ろうという意識があった。
それなのに、守れなかった…
それは心の奥の痛みとなって残っていたのです。

次第に明らかになっていく過去の事情。
登場人物が多いのは大変ですが。
年月が経っていったことを感じ取りながら、オリヴァーが確かめていく家族関係や様々な変化。
それを描き出していく筆力と、容赦のない真実。

離婚から何かと不安定だったオリヴァーが、前作で知り合ったお似合いの女性と付き合っていることが救いです。
オリヴァーを心配していたピアは胸を痛めますが。
真相が明らかになったことは、やはり救いともなるのでしょう。
期待通り、期待以上の、読みごたえがありました。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ミステリ(未分類)
感想投稿日 : 2021年10月13日
読了日 : 2020年12月8日
本棚登録日 : 2021年10月13日

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