真夜中のパン屋さん 午前0時のレシピ (ポプラ文庫) (ポプラ文庫 お 7-1)

著者 :
  • ポプラ社 (2011年6月3日発売)
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真夜中が開店時間というちょっと変わったパン屋さん。
首都高と国道246が重なり合う町の~駅からはちょっと離れたあたり。
男二人でやっているその店に、高校生の女の子が転がり込んだ。

篠崎望実は、なかなか家にいつかない母親にネグレクトされて育っていた。
ある日、家に帰ると母親の荷物がなく、手紙には異母姉の暮林美和子の元へ行けとあったのだ。
パン屋「ブランジェリークレバヤシ」のオーナーは、美和子の夫だが、美和子は事故で急死した後だった‥

当然のように~望実を受け入れる暮林。
白いコックスーツを着た30代後半の、眼鏡をかけたいかにも人がよさそうな男。パン作りも習っているが、主にレジを担当。半年前までは海外勤務のサラリーマンだったのだ。
パンを作っているのは若くてハンサムな柳弘基で、黒いコックスーツが似合う。こちらは口が悪い。
望実は弘基とはすぐ口喧嘩になるのだったが。
学校でいじめに遭っている望実だが、気丈に対処していた。

ある日、パンを万引きしようとした男の子こだまを見つけ、その子の家を訪ねると、後で母親が殴った様子。
しかも、何日も母親が家を空けることを知り、何かと世話をすることに。
こだまは、健気にも、大好きな母親・織絵ちゃんの帰りを待つために家にいると言い張るのだが‥

何かと店を手伝うようになった望実。
パンの宅配も受け持つことになったが、配達に行った先でまた思いがけない出来事が。

それぞれにかなり強烈な過去を抱えた登場人物たち。
急いで読むと、虐待を含む不幸の連鎖に押しまくられそうになりますが。
しっかり踏みとどまろうとする意思や、若々しい勢い、何気ない人のあたたかさに救われます。

おだやかな暮林の生き方。やりがいのある国際組織での仕事に熱中していたのだが、突然妻を失って、途方にくれたこの半年。
弘基の憧れの女性だった美和子だが、実は暮林と出会った若い頃にはきつい性格だったとは。
「心を半分あげる」と美和子に言われたその意味とは‥
救いがなさそうなほどの過去に縛られた思いが、いつの間にかふっとほどけるその瞬間に立ち会えて、じわりと泣かされます。

著者は1975年、岐阜県生まれ。
脚本家として活躍するかたわら、2005年坊ちゃん文学賞大賞を受賞して小説家デビュー。
この作品は2011年6月発行。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 国内小説
感想投稿日 : 2012年12月16日
読了日 : 2012年12月12日
本棚登録日 : 2012年12月14日

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コメント 2件

まろんさんのコメント
2012/12/16

暮林と弘基、オセロのようなふたりの組み合わせが面白くて
クセがあるけど気のいいお得意さんたちとの繋がりも温かいお話でした。
ドラマ化が決まったみたいで、ちゃんとイメージにあったキャスティングだといいなぁ。。。
と、今からドキドキしています(*'-')フフ♪

sanaさんのコメント
2012/12/16

そうそう、オセロみたいに対照的な二人ですよね☆
お得意さんたちも変わっているんだけど、なかなかいい味出していて。
ドラマ化ですか!確かに出来そうですね‥
キャラがはっきりしていて演技はしやすそうだけど、見た目も大事だから~どうなんでしょうね。それは~ドキドキです♪

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