ざわめく傷痕 (ハーパーBOOKS)

  • ハーパーコリンズ・ ジャパン (2020年12月17日発売)
3.55
  • (5)
  • (13)
  • (21)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 104
感想 : 16
4

カリン・スローターのデビュー2作目。
2001年のデビュー作はほどなく翻訳されたのですが、このシリーズはその後なぜかすっ飛ばされ、ウィル・トレントのシリーズはじめ他の作品が何作も翻訳されていました。
人気が確実になったので、こちらも発行することになったのなら嬉しい。

医師サラ・リントンが主人公のグラント郡シリーズで、6作あるのです。
サラは診療所で働く小児科医で、郡の検死官も兼ねている。
優秀な女性で長身の赤毛、かなりの美人ですが、まじめさが勝ってそれほど目立たない、というか自分では目立たないと思っている。
警察署長のジェフリー・トリヴァーと結婚したが1作目では離婚していて、2作目では復縁しかかってます。
ジェフリーは、勉強もスポーツも出来て、顔も体格もいい学園のヒーロータイプ。2作目では意外と育ちには恵まれていなかったことが明かされます。
などと書いていると、けっこう平和にも思えそうだけど‥

カリン・スローターの名前には前から気づいていたけど、読み始めたのは最近のこと。
残酷な事件の凄惨な描写に定評があるから(笑)
ミステリに慣れていない人にはお勧めできません…が、ただの残酷趣味とかセンセーショナリズムで描かれているわけじゃないですよ。
実際にこれほどの事件も起きていないとは言えない現実があり、そういう被害者(主に女性)の苦しみがどれほどのものかということや、極限で発揮される勇気や真実に迫りたい意図もある印象です。

サラとジェフリーがデートしていた日、ジェニーという少女が少年を銃で狙う事件が起きます。
説得に応じないため、やむなくジェフリーが銃を向けることに。
ジェニーはサラの患者の一人だったので、サラは衝撃を受けます。しかも、ジェニーの遺体には思いもよらない傷痕が‥!
当初想像されたのとは違う方向へ、事件は複雑化していきます。

ジェフリーの部下のレナ・アダムズも重要な登場人物。
1作目の事件で過酷な体験をしたレナはまだ不安定。この時点では、傍迷惑な乱れっぷりでも、まったく責められない。よく頑張りぬいたという状況なのだが‥
シリーズ通して癖が強いトラブルメーカーなため、今一つ同情できないものがあったりして。
しかし、水と油なサラとレナの葛藤は、リアリティがあります。
サラは優しい女性で、すでに2回事件で被害に遭っているけど、まだまだ若く感情的、回復力はありますね。
ずっと後まで描かれている他の作品を読んでいるので、ミッシング・リンクが繋がることに期待!しています。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ミステリ(ヒロイン)
感想投稿日 : 2021年8月1日
読了日 : 2021年7月30日
本棚登録日 : 2021年8月1日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする