オランダモデル: 制度疲労なき成熟社会

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  • 日経BPM(日本経済新聞出版本部) (2000年4月11日発売)
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「最後に柱状社会的伝統についてのわたしの実感を述べたい。オランダで三年半暮らしたが、前任地のシドニー(オーストラリア)やニューヨーク(アメリカ)と比べてじつに精神的に自由であった。・・・。日本人的であることを許されながら、オランダ社会に溶け込んでいけるという寛容性を感じるのである。これが、日本人がオランダ社会で住みやすい理由であり、駐在員がほかの国よりも好きになる大きな理由の一つだと思っている。」(p.81/82)
この人はオランダが好きなのであり、気に入ったのであり、性が合ったのである。揶揄する気はない。むしろこのことにこそエスニック・ツーリズムを行う意味があるのである。日本人は避けようもなく日本人的であるが、日本人のバリエーションは広く、各人は多少なりとも異質なものを持ち、日本文化に違和感を抱えているはずである。他のエスニシティーに接し、その文化が多少なりとも性に合えば、そのままでは後ろめたさとなりかねない日本文化(文化体験が日本文化のみの場合は=世界文化)への違和感が、自己肯定感となり、その個人内部の文化が文節化するのである。このメカニズムを通じて「観光客を媒体とした異文化の伝達と吸収が行われる」(小沢健市、「観光の影響・効果Ⅰ」、『観光学』(塩田正志・長谷正弘編著)、1994年5月、同文館、東京、p.194)のである。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 2001
感想投稿日 : 2013年2月3日
読了日 : 2001年9月30日
本棚登録日 : 2013年2月3日

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