はじめは、三文週刊誌の記事みたいな出来ごとのあれこれに違和感を感じつつも、次第に共感をもってしまう。良質なサスペンスになっているのは、鈴木陽子をはじめ、登場人物たちの心理描写がグイっと心に入ってくるから
主人公、鈴木陽子の人生、母親に愛されないところからはじまって、ゴロゴロ落ちては膨らんでいく、不幸の雪だるまっぷりがすさまじい。
正直読んでいてげんなりする場面も少なくなかった。それでも読み進めるうちに、堕ち方と反比例するように、なんだか分からない力強さを感じるようになってきて、明らかに転落しているのに、何故かアカンことと分かっていても喝采をおくりたくなる。
ラストは「おぉ、よう頑張った」とエールを送ってしまい、なんだか元気と勇気をもらってしまうような。倫理や道徳的なこと考えたら、絶対アカンことだけど、明日自分が陥いるかもしれない社会の闇の中で、洗濯機のごとく翻弄されつつも生き抜いていくしたたかさに、俺の陰や負な部分がジンジン刺激されてページ繰る手が止まらなくなる。
宮部みゆきの「理由」「火車」あたりを思い出すような作風。
残念ながら、さすがに(当時の)宮部超えまでに至らないと思うが、これは十分に傑作。
余談。新刊帯には「ラスト4行目に驚愕」ってなことを書いてあったらしいが、帯がなくて良かった。読んでたら☆の数減らしたいぐらい陳腐な煽りだと思うぞ。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
日本小説
- 感想投稿日 : 2015年11月17日
- 読了日 : 2015年11月17日
- 本棚登録日 : 2015年11月14日
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