東大助手物語

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  • 新潮社 (2014年11月18日発売)
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『ウイーン愛憎』や『うるさい日本のわたし』『人生を半分おりる』で(ぼくに)知られる義道さん(うちでは親愛をこめギドーさんと読んでいる)が、ウイーンから帰国後ついた東大助手時代とそこから脱出?するまでの悶絶と格闘の物語である。義道さんが東大の助手になったのは、某教授の推薦によるのだが、助手はだいたい3年で外へでることになっており、義道さんもなんとかして外へ出たいと頑張っている。しかし、その性格がわざわいしてか(教授からはそう言われる)、なかなかそんな話が舞い込んでこない。だいたい、こんな場合、自分の指導教授の推薦がいるが、義道さんをウイーンから呼んだ某教授は、なかなか推薦してくれない。実は義道さんはこの教授の学問が尊敬できず、それが自然と言動に現れてしまうので、教授の方も進んで世話をしたくない、しかし、出さないと自分のメンツにかかわるというジレンマを抱えている。義道さんの奥さんは、日本語教師としてウイーンで義道さんを養った?こともあり、義道さんにはめっぽう強い。しかし、日本に帰って後義道さんと奥さんの間には冷たいものが流れている(その後別居しているはず)。しかし、彼女も義道さんの就職については俄然はりきり、教授宅につけとどけをしたり、教授夫人に愛想をふりまいたりする。そんな努力が実って、義道さんは新設校に採用されるところまで行くが、その世話をした某教授やその夫人は、義道さんたちにドイツへ行っている間庭の芝生の世話をしろのだの、空港まで送っていけだのと難題をふっかける。やがて、かれらがお金をほしがっているのを悟った義道さんたちは、教授たちを空港へ送っていくかわりにホテルをとってやったり、タクシー代を持つということで教授たちの機嫌をとる。しかし、それを言ったあと、義道さんは深い自責の念にとらわれ、教授を学部長に訴えるところまでもっていく。義道さんは教授の復讐から逃れ無事就職にたどりつけるか、それとも教授の妨害にあうか、最後の部分は読者をはらはらさせる部分である。本書にはこれ以外にも東大の中での助手同士の確執が描かれている。これは事実だろう。しかし、某教授が一概に悪いかは、一方を聞いただけでは沙汰できない。

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感想投稿日 : 2014年12月27日
本棚登録日 : 2014年12月27日

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