東亰異聞 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (1999年4月26日発売)
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本棚登録 : 4646
感想 : 461
3

架空の東京・トウケイ。
文明開花が進み明るく開けた世界になった一方で、闇に蠢く魑魅魍魎。人間の業。
そんなものが時折姿を見せ、人間を襲う。
ホラー?ミステリー?色んな表情が楽しめる作品。

◉レトロで怪しい雰囲気満載の闇の者たち
発火しながら高所より人を突き落とす『火炎魔神』
白塗りに赤い着物に隠した爪で切り裂く『闇御前』
生きている様な精緻な娘の人形と会話する『人形遣い』
特に人形遣いと娘の人形とがイチャイチャしながら闇の者たちについて語らい合う場面はエロく怪しく濃密な雰囲気。
これで人形遣いがただの人だったら単なる危ないおじさんだな…と読者を戦慄させる。

◉嘘か本当か分からない…曖昧だから面白い
これは主要人物のひとりのセリフ。
その小説はこの言葉を正に体現している。

ガス灯のあかりが届かないところで殺人を行なっているのは、妖怪か、人の仕業か…
鷹司家のお家騒動絡み?犯人候補も簡単には絞れない…そんな時、説明がつかない様な不可解な事件が起こってやっぱり心霊現象?
と、読者も翻弄される。

◉とにかく小野先生は凄かった
途中推理もののような理路整然と犯人を絞っていく場面は面白かった。
小道具の用意や、演出が凝りすぎていること
その割に動機がなんか弱く感じること
個人的にはそこに引っかかったけど良かったわぁ…と思っていたら。
あらあらどうして…

言えないけど、キッチリキッチリ積み上げてきたものを完成間近で自らブチ壊して
その跡に凄く個性的な作品をズダダダっと即興で作り上げ
そしてワハハハと残響を残して去っていった…
そんな感じ。やっぱり小野先生すげえや。
これは…何かトリックがどうとか、細かいことを気にする作品ではないね。
どうでもいいか、と何か幻でも見ていた気分。

曖昧なものに翻弄される。
作品の雰囲気を楽しむ。
自由民権運動など、史実が登場するところもありもう一度勉強したくなった。
ドップリと怪しい世界に浸れました!

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2020年11月29日
読了日 : 2020年11月25日
本棚登録日 : 2020年3月29日

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