レインツリーの国 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (2009年6月27日発売)
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本棚登録 : 29406
感想 : 2675
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ネット上で同じ本で共感しあった伸とひとみ。メールでやり取りするうち、伸はひとみに会いたいと思うようになる。
今の時代(と言ってる自分が古い人間のようだが)こういう出会いは意外とあるのではないだろうか。ネットの向こうは虚像、とはいえこの人はどんな人だろうと思うことはあるから。
ここもわかる、(最近人にメールを送ることも中々ないが)来たメールに速返事を書いたとして、直ぐに送信したら引かれるだろうと、一日寝かすところとか(笑)。

会うことをひとみはしぶる。ひとみには聴覚障害のハンデがあった。
途中、読みが滞った。対話形式(メール)の部分が多く、なぜかそういうのに苦手意識があったから。対談形式とかも。
最初のデートで、伸はひとみに不自然さを覚える。ひとみはハンデを隠していたから。事情がわかった時の伸のぶつかりようは複雑。伸のような多弁な男性、男子は私のごく身近にいないから。
男がそうそう、傷ついた、とか、自分も家族の(父親)の病気のことで辛い思いをしてきたとか。出会って間もない女の子に言うんですかー。ひとみに「見かけが残念、素材が生かされてない」のようなことを言ったり。女性なら傷つきますよー。正直というか体当たりというか。でも聴覚障害のことをちゃんと調べて、ひとみをフォローし、障害と向き合っていこうとしてるから。結果的にはhappyで良かった。
文中にもあるが、ひとみが障害を隠そうという(あえて表に出さない、出したくない)気持ちはほんとにわかる。実際嫌な辛い思いをするのは本人なのだし、スルーできるものならさらっといきたいのは本音だろう。恋愛小説でありながら、聴覚障害者の苦悩も描かれている。
ひとみは決してめんどくさい子なんかじゃない。
相手に障害があるときどう向き合うか。殻に閉じこもる気持ちもわかる、ひとみには伸のように引っ張り出してくれる男性が良い。

あとがきで、著者は女性と知った。てっきり男性かと思っていました。それを知っただけでもイメーじは変わるものですね。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2020年11月9日
読了日 : 2020年11月9日
本棚登録日 : 2020年11月9日

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