朝が来る

著者 :
  • 文藝春秋 (2015年6月15日発売)
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幼いながら子を産み、迷い、葛藤しながら生き抜いているひかり。特別養子縁組というかたちで子を託した。その家庭では大事に大事に「広島のお母ちゃん」が存在していた。ずっと親に反発葛藤し生きずらかったけど、「広島のおかあちゃん」は紛れもなく自分だと自信を持ち、自分の足で歩きだした。そこに心打たれました。
最後、佐都子がひかりを見つけて、なんか唐突だなあと思ったけど、朝斗くんは心ある両親と出会え明るい未来でよかった。ひかりにも明るい未来は来る。

終始、辛かった。最初の不妊治療のところも。ある場面で、男性側の精子を採取するために、個室が用意されているというところ(よくドラマで見る)。ショックを受ける夫に佐都子は、そのような環境は当然で、具体的な想像力の欠如が、不妊治療における男女の意識の差、といっているが。
男性にとって婦人科(産婦人科)自体、踏み込みにくい領域だろうから無理もないのに。ともおもった。私が古いのか。
そして、男性側に原因があったとわかり、その母親が土下座するところ。なにもそこまで…。と思うが(もし女性側に原因あったら責められるのかという感じ)。そこが、結婚イコール子供という意識が強い、少し前の時代背景を映しているように感じた。

ひかりと巧の場面は、ある部分生々しくて、みてられない感があった。知識ないままに子をはらみ、その先ひかりは苦難の道。広島まで行って。
見知らぬ土地で短期間過ごすというのは、風景、考え方が変わって、そしてもの寂しくてなんとも言えない哀愁をともなう。世間を知らないひかりが次々と人に痛い目にあって落ちてゆく。今の世でこういうことがあるのかと思った(そう言ってる私は世間知らずなのか)。

小6の時だったと思う。学校で女子だけ違う教室に呼ばれ、養護の先生から、男女の体の仕組みの違いの話を聞いた。そろそろ生理がという年頃だから。
ほんの一時間。学校で性の関わる教育を受けたのはそれきりだったように思う。その時間、言葉にはしないが、女子はざわついた。子によって差もあった。きてる子、知っている子(家庭環境の差)の差があったからだ。
そういう知識は、少女向けの雑誌や友達との会話で情報を得ていた気がする。少しだけだが。
親とは一切合切そういう話はしたことがない。そういうことは避けて、触れるべきでないという親だったから。時代が時代だったし(そう昔でもないが)。もっと話しやすい環境だったら、もっと気楽だったのになあ。
この小説をリアル中学生が読んで何を感じるか。
こちらに登録し、ずっとこの表紙が気になっていた。図書館で目が合い、その翌日、映画化を知り、永作博美さんが番組に出ていた。よい時期に読んで良かった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2020年10月21日
読了日 : 2020年10月20日
本棚登録日 : 2020年10月19日

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