わたしは多分、この物語を読むために生まれてきたのだと思う。
テキスト、構成、キャラクターの生き、どれをとってもピカイチで一気読みした。柔らかなタイトルとあらすじから想像できるポップな雰囲気はとてもなくて、夜の闇の友情と心と心が分からない人とが出てくる。
語られるのは同じことなのに、こうも主観が異なると違う物語になるのか。同じものを見ているはずなのに全然違くて、その見せ方が非常に鮮やか。だって一章からはこんなに結末ですこんな話になるなんて全くもって想像できない。
変猫シリーズのようなポップな恋愛はないけれど、さがら総が好きなら読んで損はない。いや、読まないと損をしている。あらすじがミスリードしているのかと思うほどポップな軽さはなくて、でも重苦しいわけではなくて、語られる出来事は重いのに全然重さを感じさせない。語り口も素敵。
デカルトやアンリマユをどことなく思い出させるところがある。我思う故に我有り。この世すべての悪。世界は主観と主観で成り立っていて、私が見ているものは私だけしか見えていないのかもしれない。彼女と言葉を交わしてもお互い分かった気になっているだけなのかもしれない。知らないどこかで何かがあって、それが日常なのかもしれない。世界はそんな風にできている。
大変素敵な物語だった。さがら総という期待を全く裏切らなかった。変猫シリーズが好きなら間違いなくおすすめできます。初さがら総としても自信を持っておすすめできます。とても大切にしたい一冊です。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
ライトノベル
- 感想投稿日 : 2015年5月17日
- 読了日 : 2015年5月17日
- 本棚登録日 : 2015年5月17日
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