涼子に“記憶の泉”という香水をプレゼントした翌日調香師の弘之は自殺した。
家族は死んだと弘之に聞いていたが、弘之そっくりの弟、少し心を病んだ母がいた。デタラメな履歴書、数々の嘘を知り、弘之をもっと知ろうと弘之の実家へ行く。
弘之の大切にしていたもの、スケート、香り、そして数学コンテスト…。
高校を中退し、家出をする前に参加した最後の数学コンテスト。そこに弘之の謎めいた人生との関わりがあるのではと涼子は開催地プラハへ飛ぶ。15年前、16歳の弘之に何があったのか。
謎めいてはいるが、ミステリーではない。愛する人がいなくなった世界で、なんとか彼の姿を消しまいと、彼が生きてきた軌跡をたどる、涼子の哀しい旅がメイン。涼子の虚無感が凄く、存在が薄い。ずっと靄のかかったような静かな世界だった。
「出会った時から私は、彼のいる世界と、いない世界の落差を知ってしまったのだ。」
私にもわかる。もう元の世界には戻れない。戻りたくない。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2018年6月6日
- 読了日 : 2018年6月4日
- 本棚登録日 : 2018年6月4日
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