『老人と海』に引き続き、またしても敗北の物語。いったい彼は何と戦っているというのか。
武器をとらなければひとが死なないわけではない。たとえ武器を捨てても、ひとは死ぬのだ。抗えぬ宿命。
ひとの命が駆け引きされる中、まるで何事もなかったかのように流れることば。価値観をとことん殺して描かれる戦争。その中で織り成される愛というもの。
燃えるような激情をあえて書いてみせないようにし、あたかも客観を貫いているようにみせている。
だが、徹底して観察者に徹しているようで、彼は愛を持ち出すことで結局は反戦している。それも戦争と愛を交互に織り成すことで。戦争でのことに何も価値がないのだとするなら、なぜ愛には価値があるというのか。純粋な観察者だとするなら、どうしてキャサリンの死体にすがる姿にどうしようもない重苦しさを感じてしまうのか。道徳という問題は実にやっかい。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
物語
- 感想投稿日 : 2015年1月23日
- 読了日 : 2015年1月23日
- 本棚登録日 : 2015年1月23日
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