まさに「大社会学者」と呼んで間違いの無い、清水氏による読書術。
・・・と言っても、本の全てが読書術に割かれているのではなく、前半は自分の読書の想い出が書かれています。
前半は読書とのかかわりについて、後半は具体的な読書術、という分け方をしてもよいのではないでしょうか。ただ、一貫して書かれているのは、「読書は楽しいもの」ということ。楽しくなければ読書ではない、と。だから、つまらないのであれば読むのなんて止めてしまえ、という話の展開は、遅読かつ教科書づけになる僕にとってはある意味爽快な言葉です。
また、図書館では本を借りない、それは自分の物のようになってしまうし、書き込みもできない。さらに、余計に大切に扱わなければならないという箇所については、諸手を挙げて大賛成です。ただ、金銭的に余裕のない学生や社会人にとっては、やはり図書館に頼らざるをえないという側面もあろうかとは思いますが・・・。
書かれている読書術は、清水氏のような偉人だからこそできると思われるような方法が多いけれども(特に洋書の読み方)、必ずいくつかの箇所は自分のためになると思います。そこいらの大もうけしているビジネスマンが書いた読書術よりは、よほどためになる一冊なのではないでしょうか。具体的な読書法よりも、個人的には「読書に対する気持ち」を養う一冊としてお薦めしたい気持ちになります。
「要するに、私にとっては、英語はどうでもよいのであった。まして、落ち着いて英語を勉強しようという気はなかった。問題は、生きることであった。そして、生きるためには、育児法の原稿を書かねばならず、それを書くのには、判ろうと、判るまいと、英語の本を読まねばならなかったのである。食いつめなければ外国語は身につかぬ、と私は言っているのではない。私が言いたいのは、有無を言わせぬ絶対の目的があって、或る外国語の習得が、その目的を達成するための、これまた有無を言わせぬ絶対の手段である時、こういう緊張関係の中でこそ外国語の勉強は身につくということである。他に目的がなく、漫然と、語学のための語学をやっても、決して能率の上るものではない。」(p134-135)
- 感想投稿日 : 2008年5月11日
- 読了日 : 2008年5月11日
- 本棚登録日 : 2008年5月11日
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