NOVA+ バベル: 書き下ろし日本SFコレクション (河出文庫)

  • 河出書房新社 (2014年10月7日発売)
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感想 : 26
5

一番のお気に入りは、スペース金融道シリーズ

人間が宇宙に拡散しても、資本経済は終わらなかった。
が、貸し付ける相手に変化が。
人間だけでなく、アンドロイド、人工生命体、異星人にも貸し出し、「宇宙だろうと深海だろうと、核融合炉内だろうと零下190度の惑星だろうと」どこまでも苛烈に取り立てる。
そんな新星金融に勤める、気が弱く貧乏くじをいっつも引かされる「僕」と、頭がよく頼りになるが口が悪くすぐに手が出る、ムスリムのくせに金貸しの先輩「ユースフ」が宇宙狭しと取立てに精を出す。
さらにそこにアンドロイドの公民権運動に熱心な「アンドロイドの母」リュセが加わり、ドタバタの追撃が毎度展開される。

いろいろ特記すべき点があるが、まずは「アンドロイド」。
といっても、ロボットロボットしたのではなく、ほぼ人間と変わり無い存在として描かれる。
が、人間より公民権はなく、危険な作業に重視させられる。
さらに新ロボット三原則、
1・人格はスタンドアロンでなければならない
2・経験主義を重視しなければならない()
3・グローバルな外部ネットワークにアクセスしてはならない
に縛られている。特筆すべきは、2番目。これはつまり、「人間風にいきましょう」ということらしいが、結果、迷信やジンクスを信じるようになったり、ストレス解消のために借金して散財したり、とある意味、「人間より人間らしい」行動をとり、結果、借金取りに追われるようになる。
 新原則の肝要は「アンドロイドが人間より賢くならないように」ということだが、そのためネットワーク(現在のインターネットみたいなの)へのアクセスは制限されている。それが3であるが、かわりに暗黒網(ダークウェブ)なるものがアンドロイド間に蔓延している、が人間側はそれを見ることができない。
 たぶん、これは、作中では「ロボット」とされているが、移民などの社会の底辺側にいる人たちのメタファーなんだと思う。
 
宮内氏は、「NOVA」シリーズの「スペース金融道」シリーズで知った。
「ヨハネスブルクの天使たち」も良かったけど、こっちのほうが好み。たぶん、宮内氏のドライな文体に、コメディーの要素(主に僕とユースフの掛け合い)がマッチしているからと思われる。

単行本化、希望。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 本・雑誌
感想投稿日 : 2018年12月22日
読了日 : 2015年1月14日
本棚登録日 : 2018年12月22日

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