二つの祖国 下

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 56
感想 : 6
5

主人公に気持ちが乗り移ってしまい、最悪の気持ちで迎えた読後感。

下巻に入り、悲しみと虚無感が交互に押し寄せてくる物語展開。
しかし読者は涙に流されることを許されない。

戦勝国が敗戦国を裁く国際軍事法廷。
作者はその理想と矛盾を暴き出す。
行き詰る法定でのやり取り。
文官で唯一絞首刑に処せられた広田 弘毅の無念さは如何ほどであったろう。

アメリカの傘の下で繁栄を謳歌する我が国において、一体どれだけの人が、アメリカの犯した罪を知っているのか。
骨抜きの日本人に喰らわす鉄槌のような小説だ。

緻密な取材が伺わる。
もはやフィクションとは言えない。
各人を取り巻く状況は限りなくリアルで絶望的。
作者が最後に突きつけた結末に呆然。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 日本文学
感想投稿日 : 2013年3月13日
読了日 : 2008年10月30日
本棚登録日 : 2013年3月13日

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