燃えよ剣(上) (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (1972年6月1日発売)
4.04
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【あらすじ】
幕末の動乱期を新選組副長として剣に生き剣に死んだ男、土方歳三の華麗なまでに頑な生涯を描く。
武州石田村の百姓の子“バラガキのトシ”は、生来の喧嘩好きと組織作りの天性によって、浪人や百姓上りの寄せ集めにすぎなかった新選組を、当時最強の人間集団へと作りあげ、己れも思い及ばなかった波紋を日本の歴史に投じてゆく。
「竜馬がゆく」と並び、“幕末もの”の頂点をなす長編。

【内容まとめ】
1.新撰組の発足から失脚・殲滅までを描いた幕末物語
2.新撰組プロデューサーの土方歳三は策士、レイプ魔、そして最強
3.近藤勇は神格化された無能
4.新撰組は史上最悪のブラック企業


【感想】
新撰組のストーリーを描いた物語。
中でも、副隊長の土方歳三の一生を中心に描かれている。

農民上がりで弱小道場出身の近藤・土方が何故、そもそも何故こんなにも強いのか?という事は置いといて、単純に面白い!!
司馬遼太郎の作品は結構わき道にそれるのに、この作品はほとんどそういったヨリ道無しで、1000ページ弱でまとめられているため読みやすい!!
新撰組発足→幕末の京舞台→維新→戊辰戦争までをたった2冊でまとめるとは・・・
「翔ぶが如く」や「坂の上の雲」もそれぐらいにまとめろよと思う。笑
やはり幕末はドラマチックだなー

坂本竜馬が大好きだけど、幕末は色んな視点から読んでみるとより面白いな。
今度は長州目線の「世に棲む日日」を読みたいなー


【引用】
p192
「つまりは、こうか。新党結成の願いを、芹沢を通じて京都守護職様に働きかけさせるのか。」
「そうだ。芹沢は毒物のような男だが、この際は妙薬になる。そのうえ都合のいいことに芹沢一味の5人とは、同じ宿ときている。」
もしこういう偶然がなければ、新撰組は出来上がっていたか、どうか。

土方歳三と近藤が、入洛(じゅらく)後まず熱中した仕事は清河斬りであった。


p197
近藤は苦しくとも精一杯のお世辞は言わねばならぬ。
これが黒幕の土方歳三が引いた図式なのである。
事を成すまでは、どうしても芹沢鴨という男が必要だった。


p212
軍用金はどうなるのか。
13人の隊士の食う米塩をどうするのか。
壬生の郷中の者は、隊士の服装を見て、みぶろ、壬生浪、と嘲り始めていた。


p248
「罪あるは斬る。怯懦(きょうだ)なるは斬る。隊法を乱す者は斬る。隊の名を?(けが)す者は斬る。
これ以外に、新撰組を富岳の重きに置く法はない。」
「歳、きくが」
近藤は、冗談めかしく首をすくめた。
「俺がもしその4つに触れたとしたら、やはり斬るかね?」
「斬る」
「斬るか、歳。」
「しかしその時は私の、土方歳三の生涯も終わる。あんたの死体のそばで腹を切って死ぬ。沖田総司も死ぬだろう。天然理心流も新撰組も、その時が最後になる。」


「近藤さん、あんたは総帥だ。生身の人間だと思ってもらっては困る。
奢らず、乱れず、天下の武士の鑑であってもらいたい。」


p274
歳三の持っている唯一の可愛らしさが、おそろしく下手で月並みな俳句
「公用に、出て行く道や 春の月」
「知れば迷ひ 知らねば迷はぬ 恋の道」
朝、佐絵を想った。想うと、たまらなくなった。


p304
戦場の場で臆した者は、後で必ず処罰した。処罰といっても在来の武家社会にあった閉門・蟄居(ちっきょ)といった生温いものではない。全て死罪である。
隊士にしてみれば、乱刃の中で敵に斬られるか、それとも引き上げてから隊内で斬られるかのどちらかであったから、決死の日常である。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 名作(再読の価値がある本)
感想投稿日 : 2017年12月12日
読了日 : 2017年12月12日
本棚登録日 : 2017年12月12日

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