新装版 坂の上の雲 (1) (文春文庫) (文春文庫 し 1-76)

著者 :
  • 文藝春秋 (1999年1月10日発売)
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3

【あらすじ】
明治時代初期~日露戦争まで。
国力を上げようとしていく日本を舞台として、旧松山藩で軍人の秋山好古・真之兄弟と、俳人である正岡子規を中心とした物語。


【内容まとめ】
1.好古と真之兄弟の兄弟関係は上下関係が厳しいが、好古は素晴らしい兄であろうと努め、信頼し合っている。
2.正岡子規の優等生ではない感じが意外。友達思いの、ただの面倒くさい悪がき。
3.隣国の熾烈な土佐藩と違い、松山は話し方を始め非常に穏やかな国風。


【感想】
司馬遼太郎の代表作「坂の上の雲」遂にチャレンジ!
1巻は登場人物たちの紹介や幼年期~大人の始めまでしか描いておらず、歴史背景も日清戦争まで行っていないこともあって特に面白くはなかった。
また、「竜馬がゆく」や「翔ぶが如く」と比べ、主人公たちがマイナーなところがやや面白みに欠けた。
あと、各登場人物の晩年が既に語られているため、楽しみがないなぁ・・・(司馬遼太郎の作品はそういう傾向にあるから仕方ないが。笑)
ただ、好古の性格はとても格好いいし、これから日清・日露戦争に舞台が移って行くと面白くなっていくのだろうなと期待ができる。
結論、今後の話の流れに期待!ってところだな。

ドラマもキャストが面白そうだから是非見てみよう。


【引用】
p41
「世間には色んな人間がいる。笑って腹中に呑み下すほかない。」


p58
「人を故なく罵りなさる以上、命をお賭けになっておるのじゃろと思いますがな。
私もここで命を捨てる覚悟がでけ申したけん、チクと表においでませ」


p130
珍しいほどの美男であったが、好古は何が嫌いといっても自分が美男と言われることほど嫌いなことはなかった。
この人物は目的主義であり、美醜(びしゅう)は男にとっても何の意味も為さずと平素から言っていた。
男にとって必要なのは、「若い頃から何をしようかということであり、老いては何をしたかということである」というこのたった一言だけを人生の目的としていた。


p166
元々、子規という少年には哲学趣味がなかった。
上京してきた頃には、大物政治家になろうと思っていた。「だから大学では法律をやる!」

ところが、子規はだんだん成長している。
「あしは、あの荘子(そうじ)の講義にはびっくりしたぞな。」
「荘子は、『人間とは何か、世の中とは何か、生命とは何か』を考えさせる。」
このため大学では法律をやらずに哲学をやろうと思った。大物政治家の夢は簡単に破れた。

しかし、同じ大学生の米山保三郎(やすさぶろう)という哲学者との対面の印象で打ちのめされ、哲学者を諦めた。


p201
真之「兄さん、伺ってもいいですか。人間というものは、どう生きれば?」
好古「俺は、単純であろうとしている」
好古「人生や国家を複雑に考えてゆくことも大事だが、それは他人に任せる。それをせねばならぬ天分や職分を持った人がいるだろう。
   俺はそうゆう世界におらず、既に軍人の道を選んでしまっている。
   軍人と言うのは、己と兵を強くして、いざ戦いの場合、この国家を敵国に勝たしめるのが職分だ」
好古「だから、いかにすれば勝つかということを考えてゆく。その一点だけを考えるのが俺の人生だ。
   それ以外のことは余事であり、余事というものを考えたりやったりすれば、思慮がその分だけ曇り、乱れる。」

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説
感想投稿日 : 2017年10月28日
読了日 : 2017年10月26日
本棚登録日 : 2017年10月26日

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